じなかった場合に担保金を国庫に帰属させることによって、刑事手続進行の妨害に対する制裁としての性格をもつものであるが、実際には、違反者が担保金を提供し釈放された後に出頭することはまず想定されないので、その点では、実際上罰金と同じ効果を持つものである(22)。
排他的経済水域漁業主権法のボンド制度は、基本的に漁業水域における暫定措置法のボンド制度(23)を踏襲したものと思われ、?船舶及び人の釈放を規定していること(24条1項1号)、?釈放決定者が行政機関であること(24条2項)、?起訴前の釈放であること(25条)、?保証の内容が処罰のための出頭確保にあること(26条)という点にその基本的特徴がある。
現行刑事訴訟法では、起訴後の未決勾留の被告人に対する保釈は認められているが(88条以下)、被疑者の保釈は認められていない。ところがボンド制度は、裁判官のような中立者ではない取締官が裁量で担保金を決定する点で、いわゆる手続的デュープロセスに違反するのではないかが問題となる。事後的な不服申し立ての制度が必要ではないかとか、出頭確保というボンド制度の本来の趣旨と実質的に行政罰(反則金)に近い法効果を果たしているという実態とのギャップをどのように考えるかなどの問題はある。しかし、いずれにせよ、不服がある時は、出頭して通常の刑事手続きで争えばよいので、手続的デュープロセスに違反するとはいえないように思われる。
また、我が国の刑訴法は、捜査段階での差押えについて裁判官の発布する令状によることにし(218条)、例外的に、人の逮捕に伴う差押えについてのみ令状を要しないとしている(220条1項2号)。ところが、船舶を海上で自己の権力下に置く行為である「拿捕」は、多くの場合、令状なしで違反船舶を差押えることになり、刑訴法の規定からは「人の逮捕」が存在しなければならないはずである。そして、遠く離れた海上での逮捕は、おおむね現行犯逮捕であるから(漁業関係法令違反のように罰金刑のみを規定している場合には、刑訴法210条の規定により緊急逮捕もありえない)、現行犯逮捕の要件を満たさない限り拿捕はできないことになり、その実効性には限界があるという指摘もなされている(24)。
現行法は、拿捕が行われた場合にはボンドの提供による早期釈放の手続きを
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