141・145条を適用除外から除いており、執行の担保はそれに限定され公務執行妨害罪は除かれる、第3に、外国漁船内の外国人どうしの賭博や業過も処罰されることになるがその趣旨が疑わしい、第4に、政令で刑法の適用範囲を変更することはできない、第5に、特別規定としては刑法2条から4条までと同様の明確さが必要である、第6に、不明確で広すぎると憲法31条の問題が生じる」と指摘されている(4)。
そこで、次に、このような問題点が国連海洋法条約の批准に伴う国内法の規定においてどのように整理され、どのような問題点が残されているかを検討することにしたい。
(2)「排他的経済水域法」における刑罰法規の域外適用
国連海洋法条約56条1項は、排他的経済水域における生物資源の探査、開発、保存、管理のための主権的権利を沿岸国に与えており、73条は、そのような主権的権利を行使するに当たり、「この条約に従って制定する法令の遵守を確保するために必要な措置(乗船・臨検、拿捕及び司法手続を含む。)をとることができる。」と規定している。沿岸国が排他的経済水域において、一定の目的のために「主権的権利」をもつとされる以上、沿岸国がその限定された目的のために法令を制定することは可能なはずであり、それは刑事実体法を制定・適用する権限を当然前提とするものであるといえよう(5)。
国連海洋法条約に対応して、我が国の排他的経済水域法3条1項1号は、「天然資源の探査、開発、保存及び管理」に関して「我が国の法令(罰則を含む)を適用する」と規定し、これを受けて排他的経済水域漁業主権法3条1項は「外国人が我が国の排他的経済水域において行う漁業、水産動植物の採捕及び探査に関しては、この法律の定めるところによる」と規定し、同法が排他的経済水域における外国人の漁業等に関して適用される中心的な法律であることを示している。もっとも、同法3条2項で、適用が除外される法律を政令で指定できる旨規定し、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律施行令(平成8年7月5日政令212号)1条は、旧漁業水域暫定施行令2条1項と同様、「臘虎膃肭獣猟獲取締法、漁業法(74条、141条、145条を除く)、水産資源保護法」を本法の規制と重複す
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