日本財団 図書館


する。」と規定し、これを受けた暫定措置法施行令2条は、外国人が漁業水域において行う漁業及び水産動植物の採捕に関しては、臘虎膃肭獣猟獲取締法、漁業法(74条、141条、145条を除く)、水産資源保護法及びこれに基づく命令を除く国内法令を適用すると規定している。適用される法令については、ただ、「日本国の法令」「我が国の法令」とあるだけの包括的な規定であるから、外国人がこれらの水域で行う漁業活動そのものを規制する法令ばかりでなく、漁業に関する法令を実行あらしめるための法令をも当然含むと解すれば、この海域に関しては刑罰法規の域外適用が可能になるといえる。
現に、これらの海域では我が国の公務員の職務執行が妨害される事案がしばしば発生しており(1)、これを受けて、「適用のある国内法令の中には、漁業監督公務員による立入検査を忌避する罪を処罰する規定(漁業法141条1項、74条3項、145条)はもちろん、公務執行妨害罪に関する刑法九五条の規定も含まれる。」と解されてきた(2)。そして、長崎県対馬沿岸の専管水域内で、日韓省令違反の捜査の過程で行われた公務執行妨害、往来危険行為について刑法の適用の有無が争われた事案で、長崎地裁は、「本件は、日本国領海外で犯されているが、日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定の実施に伴う同協定の第一条1の漁業に関する水域の設定に関する法律二条によると、同協定第一条1に基づき日本国が漁業に関して排他的管轄権を行使する水域として設定された本件水域において、大韓民国又はその国民(法人を含む。)が行う漁業に関しては、日本国の法令を適用すると定められているところ、右水域等における大韓民国国民の行う漁業の禁止に関する省令に直接該当する行為はもとより、同省令を実効あらしめるため、同省令に違反する行為の検挙を目的としてなされる日本国公務員の公務に対する妨害行為及びこれを目的とする日本国艦船の往来に危険を生ぜしめる行為は、右法律の規定により、日本国の法令を適用すべき行為にあたると解される。」と判示して、公務執行妨害罪及び往来危険罪の域外適用を肯定している(3)
しかし、刑法の域外適用を包括的に認める判例・実務の姿勢には疑問がある。田中利幸教授は、的確にも問題点を整理され、「第1に、体裁上漁業関係法令に限定するのが自然である、第2に、検査妨害罪を定める漁業法74・

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION