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沿岸国が排他的経済水域を設定し、他国には漁獲の許可(割当て)を与え、沿岸国主義により取締り等を行うという国連海洋法条約が予定する制度とは異なっている。そこで、今後、両国の協議により海洋法条約の趣旨を十分踏まえた新たな漁業協定が早期に締結されることになるよう努力する必要があるが、現段階では、特例措置として大韓民国国民、中華人民共和国国民に対しては、外国人に対する規制に関する規定を適用しないことにしている(排他的経済水域漁業主権法附則二条)。
本稿では、排他的経済水域における漁業取締りに関する国内法の適用に関する若干の問題を、主として刑事法の視点から検討することにしたい。
 
2.排他的経済水域における刑罰法規の域外適用
(1)日韓漁業法、漁業水域暫定措置法における刑罰法規の域外適用
国連海洋法条約を批准する以前において、我が国の漁業に関する管轄権が領海外に認められていたのは、「日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定の実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域の設定に関する法律」(昭和40年12月17日法律145号、以下「日韓漁業法」という)及びこれを受けた「日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定第一条1の漁業に関する水域の設定に関する政令」(昭和40年12月17日政令373号)によって定められた海域(以下「専管水域」という)と、「漁業水域に関する暫定措置法」(昭和52年5月2日法律31号、以下「漁業水域暫定措置法」という)及びこれを受けた「漁業水域に関する暫定措置法施行令」(昭和52年6月17日政令212号、以下「暫定措置法施行令」という)によって定められた海域(以下、「漁業水域」という)であった。
そして、日韓漁業法1項は「日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定第一条1の漁業に関する水域は、政令で定める。」と規定し、同2項は「前項の規定により定められた水域において大韓民国又はその国民(法人を含む。)が行う漁業に関しては、日本国の法令を適用する。」と規定し、また、漁業水域暫定措置法4条は、「外国人が漁業水域において行う漁業及び水産動植物の採捕に関しては、政令で定めるところにより、我が国の法令を適用

 

 

 

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