日本財団 図書館


ということは、立法意図としては、このような事案にこそ、改正庁法第18条を適用すべきものと考えられるのだということが示されていると言うことができる。
さて、本条に定める措置は、侵害される利益の程度の応じて、二種類に分類される。
? 身体の自由をも制限する措置で、乗船者の下船・下船制限等、積荷の陸揚、陸揚制限等、他船または陸地との交通制限等、その他人に危害を及ぼすおそれある行為の制止。
? 船舶の航行の自由のみを制限する措置で、船舶の進行の開始、停止、出発の差止め、航路の変更、指定する場所への移動。
と言うことになる。そして、この措置の内容が異なるのは、それぞれの発動要件が異なるからであって、?の場合とは、最も尊重されるべき身体の自由をも制限することになるので、他の類似の法令(警察官職務執行法)の発動要件等規定の仕方も考慮しつつ、事態発生の切迫性、緊急性といった要件により、必要な措置を講じることができるとしたものであり、?の措置については、海上における特殊性(海上という場所的特性に由来する諸々の特性)をも考慮して、事態発生の客観性、手段の非代替性といった要件により、必要な措置がとれるようになったことを意味しているものと考えられる。つまり、侵害利益の程度に応じて、各種とるべき措置の発動要件にも差異を認めて規定したものと考えられる。このように、船舶だけにではなく、人に対しても、何らかの強制力を発動できる場合と、船舶に対してだけしか強制力を発動できない場合を、要件によって、厳格且つ明確に仕分けして規定されたというころに、大きな特徴があり、また、重要な点でもあると考えられる。
そこで、このような理解が正しいとするならば、本稿で取り扱っている緊急入域に端を発する問題事案については、原則として庁法第18条第2項で対処することが可能であり、且つ、妥当であると思われる。庁法第18条第2項の発動要件である「海上における犯罪が行われることが明らかであると認められる場合」とは、周囲の事情から常識的に判断して、犯罪の発生することが確実と認められる場合であって(4)、具体的には、緊急入域船舶の入域場所が陸岸に近過

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ 

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION