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ぎるため、その付近に上陸のおそれがある場合、或いは他の船舶の航行の妨害となっている場合に、再三の指導にも従わず、そのまま放置すれば、例えば出入国管理及び難民認定法や港則法といった国内法令違反となることが明らかな場合をいうのであろう。また、「海上における公共の秩序が著しく乱されるおそれがある場合」とは、一般的に、公共の安全と秩序とは、一般の社会見解において人間の集団生活としての社会生活の秩序が保たれ、社会が平穏且つ健全であると考えられる状態をいう(5)のであるから、海上における社会・経済活動が、法令や海事慣習法といった一定のルールに従って行われていないために、平穏且つ健全な状態が乱されたり、阻害されたりするおそれのある場合をいうものと考えられ、基本的には、犯罪行為に該当し難い集団的な不当行為によるものも含まれていると解される。例えば、具体的には、離島周辺海域に、外国漁船等が避泊目的で大挙して押し掛け、騒音の発生、ごみや廃棄物の海中への投棄、定期船の運航阻害、漁業活動の阻害等により、島民の社会・経済活動を混乱させるような、無秩序な緊急入域船舶に当てはまるものと考えられる。我が国の周辺海域で、最近発生している緊急入域船舶等による支障事例に対しては、犯罪の予防のため、或いは入域船舶による海域の秩序の紊乱の防止のため、当該船舶の進行を開始させ、停止させ、航路を変更させ、又は船舶を指定する場所に移動させるという「船舶に対する措置」によって、適切な対応が可能となるものと考えられる。
〔注〕
(1)平成8年6月14日、官報号外140号2頁。
(2)和田浩一、海上保安庁法の一部を改正する法律の概要、会計と監査第47巻10号21頁、平成8年9月。
(3)和田浩一、前出、海上保安庁法の一部を改正する法律の概要、23−5頁。
(4)第136回国会衆議院運輸委員会議録第11号6頁、第1類第10号、平成8年5月15日。
(5)田中二郎、新版行政法下巻全訂第二版33頁。

 

 

 

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