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件に該当するものであるか否かの確認を行うことは、沿岸国の平和、秩序、安全を維持するために当然のことと考えられるので、緊急入域に関し、事前通報制度を導入することは可能であると思われる。しかし、事前通報を強制することができるかということになると問題があり、基本的には指導の段階に止まらざるを得ないかも知れない。しかし、制度が存在して指導をなすことと、制度が存在せず単に指導するだけとでは、やはり意味は違ってくると思われる(2)(3)。そして、入域要件を備えていないのに入域通報なしに入域した船舶に対する措置については次節で検討することにする。
(注)
(1)海洋法条約に係る海上保安法制第2号56−7頁、平成7年3月。
(2)「日本国と中華人民共和国との間の漁業に関する協定」により、日中間では事前通報制度が執り行われている。また、事前通報制度を採用している国については、海上保安庁監修の緊急入域マニュアルの該当箇所を参照。
(3)「海洋法条約に係る海上保安法制2号」に示された資料、「法制整備案要綱」の「第3緊急入域」(66頁)及び「第4の(2)、緊急入域船舶に対する権限」(68頁)が参考になるので参照されたい。
 
4.緊急入域した外国船舶に対してとり得る強制的措置について
緊急入域船舶については、先ず、その要件について厳格に判断する必要があるが、次いで問題なのは、緊急入域の要件が消滅したにもかかわらず出域しない船舶と、緊急入域の要件に該当しているものの、入域中に無秩序な行動を行う、又は行う恐れのある船舶(沿岸国の平和、安全、秩序に影響を与える行為)に対する措置である。このような船舶への対応を示す事例については、先に紹介したところではあるが、緊急入域の要件が欠如していたり、それが消滅したにもかかわらず出域しない場合には、すでに検討したように、当該入域船舶は、内水内では沿岸国の完全な管轄権に服することとなり、領海内では、無害通航の一態様とは認められず、条約の規定に矛盾しない範囲で、沿岸国(我が国の)法令が適用されることとなる。その対応の仕方としては、刑事手段による対応

 

 

 

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