日本財団 図書館


問題点を指摘することができると思われる。
? 緊急入域船舶の実態把握が十分でなく、また、十分に行うことは現状では困難と思われること。
地元住民からの不審船との通報、外国漁船が大挙入域することによる水路の閉塞や、港内岸壁へ着岸することによる他船への着岸障害、海底通信ケーブルの損壊の危惧等は、事前に、当該緊急入域を希望する船舶の大きさ、緊急入域理由、入域希望場所、集団の場合はその隻数等の情報を把握し、緊急入域要件の厳格な判断、入域場所として適当か、入域船舶自体が危険に陥るような場所ではないか等を判断することにより、トラブルを防止することが可能であろう。また、不法上陸事案、各種の秩序違反の行為についても、事前に当該船舶との連絡が確保されておれば、ある程度は防止することも可能であろう。であるならば、緊急入域船舶の実態把握のための制度、つまりは「事前通報制度」について、改めて考えてみる価値はあるものと思われる。
? 緊急入域の要件を満足してはいるが、秩序を乱している船舶に対する強制措置を執ることが従来は困難と解されていたこと。
緊急入域中の船舶が我が国の秩序を乱していると認定される場合に、海上保安白書にもあるように、行為等の中止を求める指導を行ってきたとされるが、指導により改善がみられない場合の次の措置が、法制度として明確ではなかったのではないか。そこで、今次の国連海洋法条約の批准及びそれに伴う各種の法改正によって、このような場合に、強制的措置による対応が十分に行えるようになったのかについても検証しておかなければならない。因みに、従来の法律制度の枠組の中で、緊急入域に係る船舶を、我が国の法令違反で検挙し、司法手続で処置した事例について、参考までにその概略を示しておきたい。
イ.シソニア号事件(船舶法第3条不開港場寄港)。
昭和57年6月7日、大分簡易裁判所略式命令(罰金3万円・判例集未登載)(昭和57年(い)第622号)
・事実の概要
ギリシャ船籍の貨物船シソニア号(総トン数約9,800トン)の船長であるハビアラス・ゼラシモスは、法定の除外事由がないのに、昭和57年5月

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ 

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION