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めという重大且つ緊急の必要性に基づいていなければならない。その「危険」は、熟練した船乗り(skilful mariner)が、船舶、積荷又は乗組員の生命を失うと判断するに充分な根拠がある状態でなければならない。通常の航海に当然発生するような少しばかりの荒天は、ここでいう「急迫した危険」ということはできない。
?この「危険」は、当事者が自らが創り出したものであってはならない。例えば、その航海に必要となる燃料、水、食料を積み込まなかったために発生したものは含まれない。
?この「危険」は、入域した船舶の側で充分且つ明白に立証されなければならない。
(注)
(1)新しい領海警備法制等の構築のための検討について、海洋法条約に係る海上保安法制第2号56頁、海上保安協会・平成7年3月。また、海上保安庁監修の緊急入域ハンドブックでは、「船舶が緊急避難のため、外国の領海又は内水に入域することをいう。」と定義している。また水上教授も、「すべての種類の船舶は、天候又は他の不可抗力の状況により避難しなければならないときは、他の国の港に入港することができることが国際慣習法上認められてきた。これを緊急入域といい、緊急入域した船舶は、当該沿岸国の一定の法令から免除される。」とする。水上千之、内水における外国船舶の法的地位、広島法学第18巻4号24頁、平成7年3月。
(2)村上暦造、人及び船舶の出入国について、新海洋法制と国内法の対応第2号68〜9頁、日本海洋協会・昭和62年3月。なお、このように、「緊急入域」は実務上の用語とされ、法令用語としては定着していないようにも見受けられるが、海上保安庁が「緊急入域ハンドブック」を刊行し、又、長年の慣行が積み重なって、法的用語として通用してきている公用語であると言っても差し支えないものと思われる。
(3)「Entry in Distress」については、American Law Institute, Res−

 

 

 

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