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なったといえよう(32)
 
5 おわりに
密航の取締りのための措置を実行するための実体法としての出入国管理及び難民認定法は、わが国の領海での違法行為を前提としている。しかし、同法は接続水域での犯罪を規定するにいたっていないので、具体的な執行は、領海内での違反に連結する限度で認められることがありうるといえよう。
最近の密航事犯の多発する状況にあって、効果的な取締り措置を確保するためには、出入国管理及び難民認定法の接続水域への立法管轄権の拡張について立法的な手当がなされるべきである。
〔注〕
(1)山本草二・海洋法60頁。
なお、接続水域の法的性質について、高林秀雄「接続水域の法的性質」海洋法の歴史と展望I1頁以下など参照。
(2)山本・前掲注(1)70頁、236頁〜239頁。
英国では1936年以来、例外的に公海上の外国船舶に対して関税などの歳入管轄権を行使し、また米国も1824年のアポロン号事件などで同様な歳入管轄権の行使を認めており、1850年になって、プティ・ジュール号拿捕事件で右のような国内法令の領海外での執行が否認されるまで、そうした領海外での国内法令の執行が行われてきた。その後、1920年代になり、米国は、禁酒法の域外管轄権の適用を図り、国内法令の違反を防止し自国の法益を保護するために、公海上にある外国船舶に対する国内法令の域外での執行を「解釈上の所在」を根拠に認め、実行してきた。もっとも、このような解釈にもとづく実行に対しては、英国からの強い抗議があり、1924年に二国間協定が結ばれることとなって、一応の解決がはかられた。
その後、1930年のへーグ国際法法典化会議において、領海の幅を限定するとともに、領海を超えて新たな水域を設定すること、その水域における機能的・限定的な権能行使が認められることとなっ

 

 

 

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