日本財団 図書館


罪が行われることが明らかであると認められる場合」とは、海上における秩序維持の観点から、周囲の事情から合理的に判断して犯罪が発生することが確実であるというように認められる場合で、例えば、接続水域において、わが国に密入国を企ててわが国の方へ近づいてくる船があるというような場合であるとされる(26)。要するに、第18条第2項は、犯罪発生について確実性があるという場合をさすことになる(27)
ところで、第18条に定める要件の判断は、社会通念上、客観的に合理的判断でなければならない。海上保安官の主観的判断であってはならない。このことは、警察官職務執行法における職務質問の要件の判断と共通するものともいえる。この判断の基準について、警察官職務執行法の職務質問に関してであるが、一般人が当然そう考えたであろう客観性が必要であり、警察官の有する情報、警察宮の職業的経験を除くという見解もある(28)が、むしろ警察官の職務質問の要件の判断が客観的・合理的であればよいので、犯罪の予防・鎮圧に関して警察官の情報や経験に基づく判断を排斥するのは妥当ではあるまい(29)。ことに海上における犯罪の場合、陸上での犯罪とは異なり、一般人の判断になじまない海上の事情や状況を考えると、海上保安官が不審事由があると認めたその判断が客観的・合理的であればよく、海上保安官の情報や経験に基づく判断を否定すべきではない。
なお、判断の合理性は、立入検査を行う時点における具体的状況によって現場の海上保安宮が通常判断可能な程度であれば足りると解する。
いずれにしても、接続水域における違反の防止のために、海上保安官は、海上保安庁法18条1項に定める「船舶の進行を開始させ、停止させ、又はその出発を差し止めること」(1号)または「航路を変更させ、又は船舶を指定する場所に移動させること」(2号)といった行政上の措置を講ずることになる。
 
4 継続追跡権の行使
出入国管理及び難民認定法第25条2項は、外国人の出国について、
「本邦外の地域に赴く意図をもつて出国しようとする外国人(乗員を除き、第26条の規定により再入国の許可を受けて出国する外国人を含む。次条に

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION