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より、国連麻薬条約に対応しての法の整備であるという側面があるので、領海内での取締りでは十分でなく接続水域での取締りの必要性を肯定する積極的理由がどこにあるかが問題である(23)
結局、関税法や薬物関連犯罪の場合には、接続水域における洋上での積み替え事案に対する取締りをどのように考えるかに係るが、関税法については、共犯として、薬物関連犯罪については、立法管轄権の拡張により、それぞれ取締りが可能であろう。
(3)海上保安庁法の一部改正(平成8年法律75号)に伴う取締りの措置について、同法18条2項「海上における犯罪が行われることが明らかであると認められる」場合というのは、接続水域において、わが国に密入国を企ててわが国の方へ近づいてくる船があるというような場合であると説明されている(24)
すなわち、今回の条約締結に伴う海上保安庁法も一部改正の趣旨は、?海上保安官が、職務上の必要により、船舶に立ち入り検査を行うためその進行を停止させることができることを明確にすること、?海上保安官は、海上における犯罪がまさに行われようとしている場合または天災事変などの危険な事態が存在する場合であって、人の生命、財産などに危害が及ぶおそれがあり、かつ、急を要するときには、船舶の進行の開始、停止、航路の変更などの措置のほか、乗組員の下船の制限、積荷の陸揚げ、人の行為の制止などの措置を講ずることができようにすること、?海上保安官は、海上における犯罪の発生が明らかである場合その他海上における公共の秩序が著しく乱されるおそれがある場合であって、他に適当な手段がないと認められるときには、船舶の進行の開始、停止、航路の変更などの措置を講ずることができることとすること、にある(25)。このような趣旨から、具体的には、海上保安庁法第17条及び第18条が改正されたが、ことに接続水域との関連で問題となるのは、海上保安庁法18条2項である。改正される前の海上保安庁法第18条は、抽象的な規定であったため、今回の改正により、第18条を職務執行権限規定として具体的な場合の権限行使の根拠を明確にされた。政府委員の秦野海上保安庁長官の説明によると、改正後の海上保安庁法第18条第2項で「犯

 

 

 

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