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ここに、「本邦」というのは、日本国の主権が及ぶ場所的範囲、すなわち日本の領域と解されている(15)。領海法の一部改正において「領海及び接続水域に関する法律」とされた時点における「出入国管理及び難民認定法」の適用範囲に関する立法的手当がなされていないので、同法の立法管轄権の適用範囲は、領海法におけるそれを変更するものではない。
そこで「領海及び接続水域に関する法律」第1条第1項によれば、わが国の領海は、基線の外側12海里とされているので、「本邦」の範囲はわが国の領土及びその周囲12海里の領海およびそれらの上空をいうことになる。
したがって、わが国の主権の行使としての出入国管理の権限は、外国人が本邦外から本邦内に入った瞬間から及ぶことになる。また、国際法上、いわゆる接続水域においても、自国の領土又は領海内における出入国管理上の法令の違反を防止し、自国の領土又は領海内で行われた出入国管理上の法令の違反を処罰するために必要な規制を行うことができることとされているので、これを受けて、接続水域においてもその限度で執行権限の行使を行うこととなる。
(2)「出入国管理及び難民認定法」は、不法入国に関しては、本邦に入国した行為(第3条)と本邦に上陸した行為(第9条第5項)とを区別して、第70条で次のように規定している。
「次の各号の一に該当する者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金に処する。
一 第3条の規定に違反して本邦に入った者
二 第9条第5項の規定に違反して本邦に上陸した者」
というものである。
ここに、「本邦に入った」罪すなわち不法入国罪の既遂時期と実行の着手時期とは基本的に一致し、有効な旅券又は乗員手帳を所持することなく本邦外より本邦領域内に一歩踏み込む瞬間において、その実行の着手がありかつ既遂に達する、とするのが裁判例である(16)
「上陸した」罪は、本来は性質上、生活領域に直接侵入するのであるから入国した罪と比較してそれだけ法益侵害の程度が高いが、第70条によれば、

 

 

 

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