かという問題は、沿岸国の関係国内法令が域外適用の効果をもつものであることが立証なされない限り、通常はその違反行為は沿岸国の領海・内水に入ってはじめて実行の着手があったとみるべきものであり、したがってとくに領海に向けて来入する外国船舶に対して、違反の発生もないのに拿捕・逮捕などの強制措置を当然にとりうるかどうか、に関係する(10)。
そもそも沿岸国が通関、財政、出入国管理、衛生に関する国内法令の違反を防止するために行う規制については、その内容を制限する考え方が一般には妥当するが、問題は、沿岸国の国内法令が領海を超えて接続水域で適用されるような域外適用の効果をもつ内容となっているかにある。
外国船舶が、接続水域で徘徊や関税賦課の貨物の洋上積み替えなどの特定の行為を行ったり、沿岸国の事実上の規制に実力で抵抗したといった場合にも、これを防止の対象として含め、犯罪として現場で逮捕し拿捕するように定めるような場合を国際法上も適法というためには第1の見解が妥当することになる(11)。
さて、第2の立場においても、接続水域に立法管轄権を及ぼすことは国際法上において禁止されているとまではいえないとの考え方もありえよう(12)。沿岸国としては、国内との連関を肯定して立法管轄権を認めることができるからである(13)。
なお、この場合、立法管轄権の接続水域への拡張と接続水域における具体的な執行の内容とは異なるので、接続水域への立法管轄権を拡張した場合に沿岸国が接続水域で執りうる措置としてどのような内容を認めるかは、事実行為としての規制の内容の理解に係わる(14)。領海での犯罪の成立を前提として接続水域において犯罪処罰の確保を実効的とする措置を領海との連関を考慮して執りうると解することができるのではないかと解される。
3 接続水域における不法入国の取締り
(1)「出入国管理及び難民認定法」(昭和26年政令319号)は、その目的を「本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備すること」(第1条)としている。
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