域法第3条第1項第4号において、執行を妨げる行為に対する法令の適用を明確に念頭においた規定ぶりに改めた。そしてそれは、これも2であわせてみたように、漁業以外の事項に関する排他的経済水域での執行、接続水域での執行、追跡に係る執行に、共通するものであった。その意味では、今回の立法は評価されるべきものを含んでいるといってよい。
ところが、ここでの問題である、どのような規定ぶりによって、どの刑罰規定を適用することとするのか、そしてその前提として、どのような刑罰規定を適用することが、先に述べた領域外における執行を適正かつ円滑に実施するために必要であると、認識されているのかということから、これをみると、不明確なものが残されたように思われる。
筆者は、先に引用したところからも明らかなように、特別法によって、国内犯のみが処罰されるよう規定されている刑法上の罪を国外にまで拡張して処罰できるよう、修正しようとする場合には、刑法典で規定される場合と同じ程度に明確にそのことが示されなくてはならないと従来から主張してきた。刑法第2条から第4条までに採用されている方式は、各罪を列挙するというものである。第4条の2に関しても、3の(3)で示したように、補充立法のなされることが好ましい。適用される罪を列挙するという規定のしかたをとれば、ここでの問題に対する解答は明らかである。そして前提とされる必要性も、一定の資料が提出されれば比較的認められやすい。
しかし、今回の立法で採用されたのは、対象となる行為については「職務を妨害する行為」と特定されたものの、それに対する刑罰規定については「罰則」と包括的に規定されるにとどまった。そこで、この罰則にはどの罪に関する刑罰規定が含まれるのかが、解釈問題として残された。そしてそれは、どのような刑罰規定を適用することが、職務執行をする上で是非必要と認識されているのかということとも関係している。
立案当局者は、法案提出の段階になると、立案作業の当初とは異なり、領海・接続水域法第3条によって(同様に第5条や排他的経済水域法第3条第1項第4号によって)適用される刑法上の罪には、公務執行妨害罪だけでなく、傷害罪、殺人罪、往来危険罪のほか、犯人隠避罪、証拠隠滅罪、被拘禁者奪取罪、
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