逃走援助罪、更には窃盗罪や器物損壊罪まで含まれ、それに限定もされないと、考えるに至っていたようである。国会審議から窺われる立法者の意思もそれと類似する。それは要するに、結果的に少しでも職務に妨害を生じるような行為は、それに対応する刑罰規定のある限り、すべて国外犯を処罰するに値し従ってその必要があるということを根拠に、第3条を解釈しようとするものであろう。
しかし、この解釈は次のような理由により疑問である。第1に、条文上、罰則の適用対象となる「これを妨げる行為」は「職務の執行を妨げる行為」であり、「職務を妨げる行為」ではないから、具体的な執行を妨げる行為だけに限定される。従って、窃盗罪や器物損壊罪だけでなく、証拠隠滅罪や犯人隠避罪は、除かれる。第2に、そのように解しても、職務の執行が困難となったり、立法の動機であった公務執行にあたっての確信と安心を損なうことはない。第3に、そのように限定的に解しても、実際に処罰の必要な事例を不処罰としてしまうことは考えられない。第4に、立案の当初、国外犯の処罰が不可欠だとされていた罪は公務執行妨害罪であり、できる限りは執行にあたる保安官の生命・身体の保護も同時に図りたいとしていたことが、想い起こされるべきである。従って、第5に、そのように限定しても、立法上漏れを生じさせているわけではない。第6に、当初は各罪を個別に列挙することも考慮されたのであるから、ある程度限定的な解釈でも当初の目的は達成されている、からである。
そこで、前述の広い解釈と対極的に考えられるのは、「職務の執行を妨げる行為」に適用される「罰則」は、文理からも、法益からも、公務執行妨害罪に限られるという考えであろう。これも一つの考え方であるが、しかし、次の理由によりやはり疑問である。第1に、文理上は、「職務の執行を妨げる行為」に適用されるのであり、「職務の執行を妨げる罪」に適用されるのではないから、職務の執行を妨げる行為が職務の執行を妨げる罪にあたると同時に、その他の罪にあたる場合に、これへの適用を排除する理由はない。従って、第2に、保護されるべき法益は、公務の執行を出発点とすることは正しいが、それには限られない。第3に、立法者の意思から遠く離れすぎる。第4に、立法の動機から判断して、職務執行にあたっての確信と安心に翳りを生じさせるか、
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