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韓民国またはその国民(法人を含む。)が行なう漁業に関しては、日本国の法令を適用すると定められているところ、右水域等における大韓民国国民の行なう漁業の禁止に関する省令に直接該当する行為はもとより、同省令を実効あらしめるため、同省令に違反する行為の検挙を目的としてなされる日本国公務員の公務に対する妨害行為及びこれを目的とする日本艦船の往来に危険を生ぜしめる行為は、右法律の規定により、日本国の法令を適用すべき行為にあたると解される。」
この実務及び裁判例に対し、筆者はかねてから批判的であったが、その理由を次のように整理していた。
「刑法上の罪の国外犯は、刑法2条から4条に列挙された罪に限ってまたは4条の2に規定する限度で処罰される。従って、それを拡張するためには、刑法を改正するか、特別法を定める場合には拡張される罪や範囲が明確にされなくてはならない。ところが、近時この点を明らかにしないまま拡張しようとする立法がなされている。日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定の実施に伴う同協定第1条1の漁業に関する水域の設定に関する法律(以下「日韓漁業法」)と、漁業水域に関する暫定措置法(以下「漁業水域暫定措置法」)である。……〔ある下級審裁判例〕は、公務執行妨害罪と往来危険罪についてそれを認め、国外犯を処罰したものだが、著しく疑問である。第一に、体裁上漁業関係法令に限定するのが自然である、第二に、検査妨害罪を定める漁業法74・141・145条を適用除外から除いており、執行の担保はそれに限定され公務執行妨害罪は除かれる、第三に、外国漁船内の外国同士の賭博や業過も処罰されることになるがその趣旨か疑わしい、第四に、政令で刑法の適用範囲を変更することはできない、第五に、特別規定としては刑法2条から4条までと同様の明確さが必要である、第六に、不明確で広すぎると憲法31条の問題を生じる、からである。」(8)
この批判を考慮したものか、今回の法改正では、漁業水域暫定措置法を発展させ国連海洋法条約の排他的経済水域における漁業について定めた、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律では、漁業水域暫定措置法のような規定ぶりはとらず、先に2でみたように、排他的経済水

 

 

 

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