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議論の出発点は、職務を妨害する行為に対する刑罰規定の中心をなすに違いない公務執行妨害罪は、刑法に国外犯を処罰する規定がないということと、排他的経済水域制度の一部を先取りした排他的漁業水域に適用されていた漁業水域暫定措置法と、日本と韓国との間の水域で両国間の合意によりわが国の専管水域とされていた海域に適用されていた、日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定の実施に伴う同協定第1条1の漁業に関する水域の設定に関する法律(以下日韓漁業法)とには、国外犯を処罰することが可能であるかにも読める規定が存在したということである。
漁業水域暫定措置法は、第4条とその委任を受けた施行令第2条とにより、我が国漁民に適用される漁業法の適用を排除するという規定の中で、理解のしかたによってはそのような趣旨を示していた。日韓漁業法は、2つの項だけから成り、水域の範囲を政令に委任した第1項を受けるかたちで、理解のしかたによってはそのような趣旨を表していた。両法の成立は、日韓漁業法が早く、漁業水域暫定措置法は、それに倣うかたちをとった。両法は、それぞれ次のように規定していた。
日韓漁業法
第2項
前項の規定により定められた水域において大韓民国またはその国民(法人を含む)が行う漁業に関しては、日本国の法令を適用する。
漁業水域暫定措置法
第4条(漁業水域における法令の適用)
外国人が漁業水域において行う漁業及び水産動植物の採補に関しては、政令で定めるところにより、わが国の法令を適用する。
施行令
第2条
外国人が漁業水域において行う漁業及び水産動植物の採補に関しては、次に掲げる法律(これに基づく命令を含む。)以外の法令を適用する。
一 ラッコ・オットセイ猟獲取締法

 

 

 

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