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則に関する法律」を定め、「領海及び接続水域に関する法律第3条の職務の執行について適用される罰則は、次の各号の罪とする。1.刑法第195条第1項(特別公務員暴行陵虐罪)2.……」という規定を置くことが望ましい。第2号以下はなくても勿論構わない。個別に明文化することが大切なのである。
 
4.職務の執行を妨げる行為へのわが国の法令の適用
領海からの追跡による領海外での職務執行に対し妨害がなされた場合に関する領海及び接続水域に関する法律第3条の定めは、「これを妨げる行為については、わが国の法令(罰則を含む。……)を適用する。」という部分である。
ここでは、ふたつのことが規定されている。第1は、追跡に係るわが国の公務員の職務の執行を妨げる行為に対して刑罰規定の域外適用を定めたことである。この、妨害行為を処罰する刑罰規定を領域外に拡張して適用する点が、おそらく、領海・接続水域法、排他的経済水域法の執行に関する規定を通じて、最も基本的な立法理由であったであろう。第2は、職務の執行を妨げる行為に対して刑罰規定以外の法令一般を適用することを定めたことである。現実に問題となるのは、第1の点であるので、以下これを論じる。
第1の点は、従来からも強く意識され、国連海洋法条約によって執行海域が拡大したことに伴って解決を迫られていた基本事項の一つであった。1でやや述べたように、領海からの追跡に対する妨害、排他的経済水域の一部を先取りした排他的漁業水域あるいはそれに準じる日韓漁業専管水域での漁業違反に対する執行への妨害、のふたつがすでに存在していた上に、接続水域での執行に対する妨害と、国連海洋法条約で新たに認められた排他的経済水域における執行に対する妨害とが加わって、共通の解決が必要とされていた。そして、これらの妨害行為に刑罰規定を適用することの必要性については十分認識されていた。
問題は、どのような規定ぶりによって、どの刑罰規定を適用することとするのかであった。そしてその前提として、どのような刑罰規定を適用することが、先に述べた領域外における執行を適正かつ円滑に実施するために必要であると、認識されているのかということであった。

 

 

 

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