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ここでは、3つのことが規定されている。第1は、執行根拠法令の領海外への拡張を明文化したことである。第2は、職務執行によって生じる事態への刑罰規定以外の域外適用を明文化したことである。第3は、執行行為に関する罰則の規定の域外適用を明文化したことである。
(1)執行根拠法令の域外への拡張
第1の執行根拠法令には、一般法としては刑事訴訟法、海上保安庁法などが、個別法としては関税法などがある。それらの法律は、今回の立法で列挙されているわけではなく、「公務員の職務の執行について」の「わが国の法令」として一括して規定されている。しかし、これらの執行に関する法律にあっては、予測可能性を保証することの必要な刑罰規定などと異なり、このような包括的な規定のし方であっても、不適切というわけではない。
この執行根拠法令の最も主要な法律である刑事訴訟法の域外適用に関しては、今回の国連海洋法批准に伴う国内法の整備まで、あまり議論されたことはなかったが、立案過程での参考に資するため、筆者は次のように整理し主張していた。
「実務上の理解は、刑事訴訟法に場所的な制約はなく基本的には全世界に及んでいるとするものである。刑事訴訟法に場所的な限定を付した規定のないこと、国外犯の規定を待つまでもなく国外に証拠の存することは当然予想されるにも関わらず刑事訴訟法が国外における証拠収集を排除する趣旨を内在させているとは解しにくいことを理由とする。ただ主権の行使に関わるものであるから国際法上の制約には服する。これに対して領域に限るとする考え方も成り立ちうる。主権の行使を定める刑事訴訟法は主権の及ぶ範囲に限られるはずで、刑事関係者の職権濫用罪を定める刑法194条と195条および公務執行妨害罪を定める95条が、101条や195条2項あるいは193条などと異なって国外犯処罰規定を欠いているのは国外での公権力の行使を予定しなかったことをあらわしていると理解されることを理由としうる。
無限定説は、先に刑法4条の2で述べたところでは処罰を原則とする考え方と親近性を有する。国連海洋法条約の予定する自体に対して特に立法的措置を必要としないという長所を持つが、主権の張り出す印象は否定できな

 

 

 

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