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行することもできる。我が国の接続水域では、排他的経済水域における執行としてできることばかりでなく、領海及び接続水域に関する条約を踏襲した国連海洋法条約の定めるところにより、外国船舶に対しても、通関、財政、出入国管理、衛生上の国内法の違反の防止と処罰のための執行が認められている。わが国の領海にまで至れば、無害通航に関する一定の制限はあるものの、外国船舶に対しても一般に、主権の行使として執行していくことが可能である。内水では、そのような制限もない。以上のような、それぞれの海域での執行についてだけでなく、複数の海域にまたがる外国船舶に対する執行もまた認められている。国連海洋法条約第111条は、公海に関する条約を受けて、国内法違反を根拠とする、沿岸国の内水、領海または接続水域からその外側の海域すなわち排他的経済水域を含む公海への追跡(他国の領海直前まで)を沿岸国に認めるとともに、新たに、排他的経済水域に適用される沿岸国の法令の違反を根拠とする、排他的経済水域から公海への追跡(他国の領海直前まで)を規定している。
 
2.域外での職務執行とその妨害行為に関する法令 
1.でみたように、今日では、国際法上は、外国船舶に対しても、かなり広い範囲で、わが国の海上保安官の職務の執行が可能となっているが、それを現実に執行するためには、国内法上その根拠が必要であり、また執行が妨害されたときの法的処理、具体的にはその処罰が適切に定められていることが望ましい。
この、執行を妨害した行為に刑罰を適用するということは、妨害の予防効果を高めることが期待されるというだけでなく、執行を担当する者に、自らの行為の正当性と必要性を一層強く確信させ、後顧の憂いを解消させ、執行を円滑で効率的にかつ自信をもって適正に実施させるという意味でも重要である。ところが、従来は、この妨害に対する処罰が必ずしも十分ではなかった。
先に述べた、それぞれの海域におけるまたは海域をまたいだ外国船舶に対する執行のうち、船籍国の同意のある場合を当面措いたとしても、領海からの追跡、排他的経済水域の一部を先取りした排他的漁業水域あるいはそれに準じる

 

 

 

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