が原則として廃止され、基礎団体としてのグミナが復活した。また75年には郡が廃止されると共に県の分割、郡の権限のグミナへの移管などが行われ、従来の三段階制に代わる県とグミナの二段階制への移行が進められた。この改革は当時のギエレク政権が、郡を基盤として定着し地方において利益勢力化していた党・国家官僚の影響基盤を除去することを目的として実施したものとされる。そして現在の49県もこの時に設置されたものであるが、この変革によりポーランドの「地方」が従来有していた歴史的・社会的・文化的な関係が解体されたという見方もある(以上は、Polityka
1996 Nr.11を参照)。
その後1984年には限定的な投票の自由を伴う地方選挙が実施され、また1989年から90年にかけての一連の改革でグミナの「自治体」化やそれに伴う権限の移管、および地方財政制度の整備が実施された。また1990年3月に施行された「国家行政機関の地方組織に関する法律(以下「地方組織法」と表記する)」では県の下位機関として支庁(rejon)が設置されたことで、法律上では三段階の地方制度が復活することとなった。ただし支庁は県の「出先機関」でしかなく、実態は1975年改革以後の二段階制と大きな変化はない。1995年末の段階では、49県267支庁2,483グミナ(グミナ・市・「市一グミナ」の合計)が地方団体として存在している。
(2)憲法上の位置づけ
地方自治に関しては先に述べた小憲法の第5章「自治体」の中に規定があるが、ここでは地方制度に関する具体的な位置づけがなされているわけではない。第70条において地方自治体が地方の公共問題における基本単位となること(1項)、グミナは地方自治の基本単位となるが、それ以外の地方組織が自治体となるかどうかは法により規定されること(4項)が示されてはいるが、具体的な地方制度に関する規定は与えられておらず、また「暫定的な規定」の性格上「地方自治」に関する憲法上の位置づけも示されていない。そのため「地方自治」をどう規定するかという問題も、憲法上では曖昧なまま残されている。
地方自治体は「法により規定された範囲内で」「中央政府の管轄事項として除外された事項を除いて」(71条1項)、地域内の公務全般を管轄する。地方自治体の選挙は普通・平等・秘密選挙により実施され(72条1項)、また住民は地域内の問題について住民投票によって決定権を行使することができる(72条2項)。ただ現在の小憲法が地方制度について規定しているのはここまでで、これ以外の財政に関する権限や、自治体に対する国の監督などの事項は全て「法律により」規定されることとなっている(73条から75条)。このため現在のポーランドの地方制度について検討するには、具体的な個別の法律に当たる必要がある。