(6)財政・税法と地方自治
地方自治の実現にとって、その自主的な財政と税制はもっとも重要な保障のひとっであることは間違いない。しかし、連邦、構成主体、自治体のそれぞれが深刻な財政難に陥り、徴税機能も十分に働いていない現在のロシアでは、この問題はもっともわかりにくいもののひとつとなっている。各自治体レベルの予算・決算なども入手しえていないので、ここでは法制上の概要を紹介するのみということにせざるをえない。
ア 地方税制等
地方税および納税の免除は、地方議会が自主的にこれを定めるとされている。また、自治体の区域で採取される天然資源の利用料を徴収することもでき、目的別予算外基金を形成し、地方自治機関は、地方債および宝くじを発行し、自治体銀行その他の財政信用施設を設置することもできる。税法の規定では、構成主体と地方自治体の区分が不明であるが、税制そのものが全体として安定的でない状況にあることを考慮しておかなければならない。
イ 自治体の経済的基盤
地方自治の経済的基盤は、自治体財産、地方財政、国有財産で地方自治機関に管理が委譲された財産その他の財産であり、地方の財源は、地方税(各種手数料を含む)、地方交付税、公営企業の事業収入(公有企業の売却を含む)、補助金(国庫支出金)からなっている。
ウ 自治体財産
自治体財産は、地方予算の資金、自治体の予算外フォンド、地方自治機関の財産、自治体が所有する土地その他の天然資源、公有の企業および団体、自治体の所有する銀行その他の財政信用機関、公営住宅フォンドおよび非住宅用建物、部屋、公立の教育、保健、文化およびスポーツ施設ならびにその他の動産および不動産である。
工 自治体と企業
地方自治機関は、経済活動を実施するために、企業、施設および団体を創設する権利を有し、企業の目的ならびに活動等を定め、その生産物(サービス)の価格および料金を規制し、定款を承認し、当該企業の長の任免を行ない、活動報告を聴取する。地方自治機関と自治体所有の企業の長の関係は、労働法上の契約関係であり、地方自治機関と自治体所有ではない企業との関係は契約にもとづくことに