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挙権にもとづき、秘密投票で選挙される議員によってこれを構成し、その定数は、自治体憲章でこれを定めることとされている。

地方自治体の代表機関は、自治体憲章で規定する一般拘束的規則の制定、地方予算および決算の承認、自治体の発展計画の制定、地方税の決定、自治体財産の管理および処分の手続の決定、自治体憲章に規定する地方自治機関および地方公務員の活動の監督をその排他的管轄事項としている。

オ 地方議会と首長の関係

自治体の首長は、自治体の区域に居住する市民が、普通、平等および直接の選挙権にもとづき、秘密投票で選挙し、または連邦的法律およびロシア連邦の構成主体の法律の定める手続で地方議員のなかから代表制機関がこれを選挙する。住民が選挙した自治体の首長は、地方自治の代表制機関の構成員となる権利を与えられている。この点は、代表機関、すなわち地方議会の位置づけを弱めるものになりはしないだろうか、実際の状況を踏まえて検討を要する問題であろう。

カ 市民の集会、スホートなどの位置づけ

新地方自治法もまた、市民の集会、スホートを重視している。市民集会の招集、実施、決定の採択やその手続は、自治体憲章でこれを定める。市民集会が地方自治の実現にかかわる権限を行使する場合の市民集会は、有権者の過半数の参加を要する。これが、いわゆる公共団体としての地方自治体でないことは明らかであるが、こうした形態の自治の実現を重視することが、逆に自治体の位置づけのあいまいさを呼んでいるようにも思われる。同じく、地域的社会的自治なるものの強調も地方自治体そのものの位置づけをあいまいにしている。今回の訪問でも、政府関係者を含めて、こうした集会や組織と自治体との混同が眼についた。この点はモスクワ市のところでいま一度立ち返ることにしたい。地域的社会的自治とは、自治体の区域の一部である住居地(自治体ではない住民居住地区、ミクロライオン、街区、通りその他の区域)での市民の自主的組織であり、直接住民が、または住民の設置する地域的社会的自治機関が、自主的に自己責任において固有のイニシャティヴを当該地域に固有の問題について発揮するためのものである。わが国の団地自治会や町内会を想起すればよい(27)。

こうした機関の重視は、住民投票という直接民主主義の形態の重視とも関連したものであろう。住民の単位として、比較的小規模だとはいえ、住民投票や市民集会の位置づけが高いことは、逆に少人数の議会(代表機関)の位置の低さとも連動することになっているように思われるところである。

 

 

 

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