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するサブ・システムたる地域社会が、そして国民が、自らもてるエネルギーを最大限発揮して、発展に貢献することが必要である。

その際、一つのシステムとして一体性をもった国家が発展を図ろうとするならば、国内の天然資源、労働力、資本等々の種々の資源をできるだけ有効に組み合わせて、効率的に富を生み出す仕組を形成することが必要である。それには、限られた資源を国内の特定の地域に重点投資し、最大限の効率を生み出すように、資源の動員を行うとともに、そこで産出された富を国内の隅々にまで配分する仕組を作り上げねばならない。

しかし、現実に、このような仕組を作り上げ、それを期待通りに作動させることは必ずしも容易なことではない。効率的な発展のための重点投資は、その地域の突出した発展をもたらすが、他方で、それ以外の地域との大きな格差を作り出す可能’陸も高い。その結果は、都市部の過度の集中と農村部の荒廃であり、それらが国家全体としての発展にブレーキをかけることになりかねない。

そのような事態を避けるためには、都市部で産出された富の一定割合を確実に地方へ均霑する仕組を作り稼働させなければならないが、その仕組を稼働させるためには、集権的な統制が不可欠であり、地域サブ・システムの自立性は、この場合も制限されざるをえない。そのような自立性の制限は、地域の反発を招くとともに、その活力を殺ぐことになりかねない。このような集権的な統制と地域サブ・システムの活力のジレンマのなかで、いかに両方向へのベクトルの最適の均衡点を維持していくかも、地方制度のあり方にかかっている。

このように、地方制度は、一言でいえば、国家統合への求心力と地方自治への遠心力のバランスを考慮して形成されねばならない。換言するならば、国家全体としての一体性を保ち、発展を図ろうとするならば、中央からの集権的な統制によって、国内の資源の動員を図る必要があるが、それはときに地方の実情を無視した統制となりかねない。かといって、地方の自治に全面的に委ねると、国家全体としての均衡ある発展は実現しない。そこで、つねに全体としての均衡を図りつつ。地方の実情に応じた政策を形成・実施できるような仕組を形成しておく必要があるのである。

3 地方制度の諸相

このように地方制度は、その国の政治情勢の関数ということができるが、現実の地方制度の設計に当たっては、多様な論点が存在する、ここではそのうち主要なものをあげておくことにする。

(1)地方制度の構造と単位

地方制度の基本構造の問題として、地方団体を何層構造にするか、広域団体、基

 

 

 

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