(3)しかし、<1>〜<3>の方法をとる場合でも、憲法が地方自治を保障した趣旨、住民による住民自治の要請、実際の行政運営の効率化の要請などからして、首都地域の行政に住民の意向反映の機会が保障されなければならず、そのような制度が設けられない場合には、憲法92条、93条の趣旨に反して違憲となる。
(4)民意の反映の制度としてはさまざまのものがあるが、後述の条例制定権に関する議論などをも踏まえれば、住民によって選挙される議会が設置されることが必要である。ただし、議会による民意の反映が確保されるのであれば、長の選挙をせず、また、議会の議員の数を少なくするなど、憲法93条の前提とする首長制以外の制度を設けることは可能である。
(5)条例制定権についても、首都地域の住民がみずから自主的に地域に関する問題について決定・解決していくためには、住民の選挙に基づく議会による条例制定権が確保されることが必要である。法律のみによって首都地域の行政が決定されることは、首都地域に居住する住民の意向反映という観点からして、違憲問題を惹起しよう。
(6)憲法95条の地方自治特別法に対する住民投票の制度は、<1>首都地域を新たに組織化する場合、0首都地域の行政を実際に運営していく場合、の2つにおいて問題となるが、ともに、住民の意向反映を確保するために、首都地域に関する法律の制定には基本的に住民投票が必要である。仮に住民投票が必要ではないとしても、住民の意思を反映させる制度的な措置を設ける必要がある。
以上のように、首都地域の特別の行政組織に関する憲法上の要請は厳格なものではなく、都道府県・市町村という地方公共団体以外の組織を創設することも可能であると解される。ただし、そこでも住民の意思反映の制度が設けられていなければならず、具体的には、議会の設置と条例制定権の付与が必要ないし妥当なものとなる。これらの諸点を考慮すれば、政策的には、首都地域を特別の行政組織とするのではなく、地方自治法上の府県ないし市として組織し、ただし、首都に要求される外交・政治機能とそのための安全や風紀への配慮、国と首都地域の行政団体との間の協力関係の維持