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れることになる場合でも、先に若干述べたように、基本的に住民の意向が反映される制度が必要となると解される。首都地域の行政について基本的なルールは法律で定められることになるが、当該法律は首都地域についてのみ妥当する法律となるので、原則として首都地域住民による住民投票が必要となると考えられる。その際に、国の直轄地としての新首都は「地方公共団体」ではないので、憲法95条は妥当せず、したがって住民投票は必要ではないという見解もありえよう。しかし、この見解は形式的にすぎる。憲法95条の趣旨が、特別の地域にのみ妥当する法律は当該住民の同意を要することとすることによって、特定の地域に対する特別の規律について自治権と住民意思の尊重にある以上、特別の地域にのみ妥当する法律を制定するにあたっては、当該地域が「地方公共団体」でないとしても、憲法95条の趣旨に則り、住民投票を要すると解するのが妥当であると思われる。また、そのように解しないと、国の直轄地としての新首都の規律がもっぱら法律によってなされ、それに対しては住民は意見を表明することが制度上担保されず、一方的に法律による規律を受ける地位にとどまることになる。仮に憲法95条の適用を受けないとしても、首都地域にのみ妥当する法律については、首都地域に居住する住民の意向反映の制度は不可欠であろう。

7 おわりに

 以上の考察を要約すると、以下のようにまとめることができる。

(1)日本国憲法は、日本の領域の大部分に地方公共団体を設け、地方自治を行わせることを要請しているが、限られた地域について、十分に合理的な理由がある場合には、当該地域を現行の都道府県・市町村以外の組織として編成することを禁止していない。首都地域についても、既存の地方公共団体とは異なった組織を創設することは原理的に可能である。

(2)異なった組織を編成する方法としては、<1>国が直轄地とする方法、<2>国の管理下にあるが地方公共団体に準じた特別の組織にする方法、<3>特別の地方公共団を創設する方法、が考えられる。

 

 

 

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