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ら1993年までの収入の年実質成長率をみると、財産税はプラス5.2%であったが、所得税と売上税はそれぞれマイナス5.3%とマイナス4%であった。そして、税収全体では、マイナス0.1%となっており、税収は停滞している。
 DCの収入内訳で特徴的なことは、税収の配分が所得税、売上税、財産税に3分割されている点である。州と地方政府が併存するDC以外の地域では、主たる税収として、州に対して所得税と売上税、地方政府に対して財産税が配分されているが8)、DCの場合は、州に相当する政府が存在せず、一層制の政府構造となっているため、本来は州に多く配分されている所得税と売上税がDCに多く配分され、その比重が高くなっている。
 また、DCの収入内訳を他の4つの都市(ボルチモア、ボストン、クリーブランド、シアトル)と比較すると、DCは外部財源の比重が低くなっているが、他の4つの都市は州やカウンティー等からの資金の受け入れが大きいためにその比重が74%と高くなっている。このことは、先に述べたように、本来は州に配分されている税もDCに配分されているためであるが、重要な点は、DCは所得税や売上税を当該地域内でしか課税できないために、他の都市と比べて課税対象となる地域が狭められているという点である。したがって、課税べ一スが当該地域から外に出た場合、他の都市であれば、州やカウンティーを通じて、そのような課税べ一スにも課税して、その税収を都市に還流させることもできるが、DCの場合はそれが不可能である。それゆえ、DCの場合は、人口の流出による課税べ一スの損失が生じた場合、州やカウンティーが存在しない一層制の政府構造となっているがゆえに、他の都市と比べて財政問題が一層深刻化する構造になっている。
 ここで、DCとその郊外を含むDC大都市圏の人口の推移をみてみると、DCは1950年から1993年の間に80万人から60万人弱へと減少しているのに対して、郊外のフェアファックス・カウンティー、モンゴメリー・カウンティー、プリンス・ジョージズ・カウンティーは、それぞれ20万人以下から70万人以上に人口を増加させている。とりわけ、中産所得層がDCから郊外へと流出しているので、DCは所得税の課税べ一スを失うことになる。それでも、DCは郊外のカウンティーと比べれば、主たる職場の提供先となっているため、居住地はDC外であるものの、昼間はDCに通勤してくるという人も多い。 ちなみに、1990年においてDCで発生した稼得所得のうちの3分の2は、非居住者

 

 

 

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