の稼得所得である。DCに職場のある者は、昼間はDCの公共サービスから便益を得る一方で、居住地はDC外であるため、DC外で所得税を支払う。しかし、DCは、このような通勤者に所得税を訳せないほか9)、通勤者への通勤に関わる課税も明示的に禁止されているため、その分税収が減少する構造となっている。
DCの収入のうち、約2割を占める財産税は、最近における実質財産価値の低下傾向の下で、今後もしばらくの問は、増収が見込めない状況にある。また、DCは、首都固有の課税制約として、連邦政府が所有する建物や土地に財産税を課すことができず、このことにより失われる税収は1993年において4億5000万ドルと推定されている10〕。
DCの収入のうち、14%を占める売上税は、中産所得層の郊外への流失や境界地域における小売業の発展という状況の下で、今後も税収の停滞が続くものと予想されている。また、DCは、外交や軍事関係の顧客から売上税を取れないために、7000万ドルの減収が生じているとみられている。
以上のことから、現状ではDCが税による増収を期待することは難しい状況にある。増税という選択肢に関しても、DCの税負担は、近隣地域の税負担と同じ水準にあるため、これ以上の増税は中産所得層の流出に拍車をかける恐れがある。
最後の主たる収入源として、連邦による支払がある。現在の方式では、その支払額は2年前にDC内で得られた収入の24%に設定されている。ただし、連邦議会は必ずしもこれに拘束されるわけではない。この方式は、自主財源を増やすほど連邦からの支払も増えるため、自主財源を増やそうとするインセンティヴを与えるものであるが、何らかの理由で自主財源を増やせない状況に陥ったとき、マイナスの財政調整機能を発揮するため、連邦からの支払もますます減少するという結果になる。最近、連邦政府が支払った6億6000万ドルは、失われた財産税収、軍事・外交団体への失われた売上税、連邦政府への公共サービスの供給コストを賄うには不十分であるとみられている11〕。
5 DCの財政破産と連邦政府の介入強化
前節でみたように、人口と比較したDC職員数が多いことによる人件費の過大な負担、貧困層向けのメディケイドなどの抑制の難しいユンタイトル・プログラムの支出拡大傾向、