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C設置以前、〜1888年、およびGLC廃止以降、1986年〜)も、数多くの単一目的団体が、さまざまの分野で独立して業務を行いサービスを提供し、またその管轄範囲もさまざまであり、したがって地方自治の総合性が発揮しにくかったことがあげられる。
 たとえば、他の地域でははやくからカウンティの管轄下におかれていた地域交通がGLCの管轄下とされたのは1969年であった。しかも、前述の地下鉄料金をめぐる裁判の結果、GLC廃止の前年の1985年には、ロンドンの地域交通は、再び中央政府の管轄下に戻されている。
 教育分野では、1870年に設置されたロンドン学校委員会が、LCC設立後も存続し1904年まで権限を保有していた。その後はLCCが教育行政を管轄したものの、1965年のGLC設置の際には、インナー・ロンドン教育庁が設置され、旧LCC地域の教育行政を行った。そしてそのインナー・ロンドン教育庁は、1986年のGLC廃止の際には12特別区の共同処理機関となり、最終的には1990年に廃止され、現在は各特別区が教育行政を担当している。[18]
 都市計画についても、経済変動によってさびれたドックランド地域の再開発のために1981年に設置されたロンドン・ドックランド開発公社によって、GLCの権限はすでに大きく制約されていた。[19]
 このように、単一目的団体の重複と錯綜という、イギリス地方自治の最初期の問題が、ことロンドンに関しては、首都であるがゆえに中央政府の関与が他の地域と比べて多く、今日に至るまで継統してきたといってよいだろう。

3 ネクスト・ステップ(Next Steps)改革によるイギリス式首都機能移転

 イギリスでは、日本と異なり、議会およびホワイト・ホールとよばれる中央官庁の中枢部分の移転は考えられていない。しかし、1960年代以降一部中央官庁の地方移転が進められてきた。[20]さらに、1980年代に開始したネクスト・ステップ改革によって、それまでロンドンで行われてきた行政の地方移転が加速されると思われるので、これについて簡単に説明したい。
 ネクスト・ステップ改革とは、行政を小規模の管理・政策立案機能と執行機能に分割し、執行機能を担当する機関に自律性と責任を付与し、相当程度その長の判断に委ねようというものである。「ザ・ネクスト・ステップ」と題するレポートが1988年に提出されて以降、次々と中央政府機関のうちの執行機関がエイジェンシーの名で半独立

 

 

 

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