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はじめて中央政府が規制を加えることとしたのである。
 さらに1990年には、それまでの資産課税とまったく異なる人頭税(コミュニティ・チャージ)を導入し、基本的には(各種の減免措置はあるものの)18歳以上のすべての成人が地方税を均一に負担する新しい地方税制がスタートした。それまで資産を有する一部の住民が課税されていたのに対して、人頭税では(労働党支持者層である)賃貸住宅居住者にも税負担が課されたのである。
 しかしながら、この人頭税は非常に不評で、各地で不払い騒動が起き、またそれが徴税費用を大きなものとした。移行に伴う問題やインフレ率を考慮して各地方公共団体が算出し課税した人頭税の額が中央政府の予想額をかなり上回るものであったのも、混乱の一因であった。また、人頭税の金額を抑制するための付加価値税増税による国庫補助の増額が遅れたことも、この混乱に拍車をかけた。この人頭税をめぐる騒ぎが、結局保守党内部に亀裂を生み、1990年のサッチャー退陣を招いたのである。結局1993年には、従来のレイトを手直しし、基本的には資産課税ではあるが、応益原則も反映させたカウンシル・タックスの導入が行われ、人頭税はわずか3年で廃止されたのである。[14]

ウ 一層制地方自治への改革

 イギリスにおける近年の地方行財政制度の改革の第三としてあげられるのは、現在行われつつある非大都市圏での一層制地方自治への改革である。すでに述べたように、GLCおよび6大都市圏県の廃止によって、ロンドンおよび大都市圏(マンチェスター・シェフィーノレドなどが含まれる)では、一層制地方自治が実現している。これを非大都市圏にも拡大しようというのが、メージャー保守党政権の当初の提案であった。この提案では、カウンティを廃止する一方、合併によってさらに人口と財政基盤を確立させるディストリクトが、将来的には地方自治を担うべきであると考えられていた。1992年には地方団体委員会(バンハム委員会)が設置され、1995年初には委員会の勧告が提出された。
 委員会の提案は、政府の原案とは異なり、1)非大都市圏内の一定以上の人口を有する都市(たとえばヨーク、ダービー)についてカウンティからの独立を認める、2)カウンティのアイデンティティを重視して、「人工的な」、つまり1974年改革で新たにつくり出されたようなカウンティについては廃止も考えるが、その他は

 

 

 

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