会の役割を兼ねていると理解したほうが実態に近いという指摘もある(パリ議会の選挙制度等には1982年以来、大都市の特例が適用されているが、これについては次節で述べることとする)。1982年の地方分権法制定以前は、パリ議会により選出されるパリ市長は市町村としてのパリ行政の長であり、県の執行機関としては他県と同様に知事(パリ知事)が置かれていた(もっとも、パリ県にはパリという一つの市町村しか存在しないので、パリ知事はパリ市に対してだけ後見監督権を行使していたということになる)。分権化以後は一般の県と同様に、県議会議長が県行政の長となったが、この県議会議長とはすなわちパリ市長のことである。つまり、パリ議会によって選出されるパリ市長が、一般の市町村長としての役割と県議会議長の役割とを兼務し、パリの行政全般に責任を負っていると解釈することができる。
第二の特色は、警視総監の存在である、警視総監の職はもともと、王政の時代に首都の治安の責任者としてパリ代官が置かれていたことに由来するとされ、ナポレオン一世によって警視総監とあらためられた。警視総監は、警察の知事を意味する原語からもわかるように、知事職の一種であり、大統領によって任命される内務官僚である。このような極めて特殊な職が分権化以後も生き残っていることは、パリ行政の最大の特色であるといえるだろう。
警視総監は、一般的には市町村長の権限とされている以下の事項を担当する。
(1)道路の安全および通行の自由の確保
(2)災害救助
(3)不正取引の取締
(4)行商の取締
(5)禁制品の押収
(6)公定価格・統制価格の維持
(7)市場の監視
(8)生活必需品の流通の保障
(9)公其の場所の監視
(10)記念碑・公共建造物の保護・保存
フランスの警察制度は複雑であるが、市町村長の権限は比較的狭く、国家警察に委ねられている部分が大きい。パリの警視総監は、市町村警察の権限のほか、通常は県知事の管轄下にある国家警察をも管轄するので、その部分についてはパ