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仕組みをつくったのは、非常に特殊な歴史的状況(戦後処理〜日本の終戦直後の人たちにとって国体護持が問題であったように、ブレーメンの人にとっても都市国家を守ることが大事であった)の下でのことと考えられているが、しかしそれはもっと普遍的な問題の歴史的あらわれにすぎないと、国家裁判所は82年に言ったのである。この判決は、地域評議会の選挙を間接選挙している、州議会議員選挙の得票の比例配分で議席数を割り振っていることを違憲として訴訟が起こされたときの判決である。結果は合憲であった。ブレーメンの地域区分の例は、地域の歴史の反映に止まらず、普遍性があるものであって、このことからも役所機能の地域分散と住民参加の強化は大都市においては普遍的な方向性だと私は考えている。

(補論)

ドイツの自治体の地域区分のあり方は、経済的法則が比較的純粋に妥当し得て、住民の選好を反映させる上で最も効率がいいという理由よりは、むしろ当初から制度がそのようにつくられていて選択の余地がないという理由で決定されている面がある。小さな自治体はクライス(郡)に入っており、郡議会もあるが、比較的大きな都市は、それに入らない。そして比較的大きな都市は、逆に郡に属さないかわりに内部を区切って自治の実を上げなさいということになっている。しかも人口に応じて三つから五つに区切れといったことまでを法律で規定しているため、選択の余地がほとんどないのである。また区分された「区」は、特定のことについて意思決定をするが、その意思決定がいかなる法律上の効果を持つかも法律で規定されている。そしてそのうちの幾つかは、終局的な決定であり、即ち国家権力の行使となる。例えば、ブレーメン市のケースで言えば、違憲判決で重視されたファクターが二つあり、一番重要な決定権は予算の配分権、つまり、地域評議会という区の代表集会、住民参加組織が年に受け取るまとまった予算(ブレーメン全域で200万マルク、1地域でも結構な額になる)の使途の決定であり、これは原則として終局的決定になる。実際の使途は、一つは地域内

 

 

 

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