ブレーメン州憲法第145条第1項には「自治体の国制一基本的制度一は自治体自身によって定められる。法律によってそのための基本原則が定められることができる。」という規定がある。この規定はかなり思い切ったものである。普通は州の法律で決めている〜日本でも地方自治法という国の法律で決めている〜ものを自治体が自分で決めていいというものである。非常に特別な、ドイツではブレーメンだけのものである。ブレーメンは純粋な都市国家ではなく二つの市から成っている。ブレーメン市とそれから飛び地のように離れているブレーマーハーフェン(ブレーメンが1827年に買収した港)市である。したがってブレーメン州憲法第145条第1項は、ブレーメン市もブレーマーハーフェン市も、自分たちの仕組みは自分たちそれぞれで勝手にお決めなさいという趣旨になる。なおブレーメン市の立法機関、ブレーメン市民議会(Blrgerschaft)は、そのメンバーがブレーメン州議会のメンバーと兼務であるが、ブレーマーハーフェン市は別の市議会を持ち、州議会の直接的な影響を受けないで条例を制定している。このことからブレーマーハーフェン市はドイツで最も自由な都市であると言われている。このように、ブレーメンの制度は、私の仮説を一本道に例証するようなものではなく、戦後史の重い歴史に規定された特殊な存在であるが、それにもかかわらずそれは、大都市行政の効率性と住民参加の要請との困難なバランスという普遍的な課題に、一定のところにバランスの支点をおくことによって解決しようとしたものであると見ることができると思う。そのことを語った裁判所の判決からの引用を最後に挙げる。次の引用文はブレーメン国家裁判所(州の憲法裁判所)の判決文である。「ブレーメン州憲法第145条第2項を生ぜしめた、編入されたブレーメンの自治体とかつてのプロイセンの自治体(:1946年に、先述のように都市国家としての自立性を守るために編入したもの=筆者注)の、自立性要求は、工業化によって大都市における集中と集権の過程がひきおこされ、これによって行政の透明性と効率性が失われ、市民が、その生活状況を大きく規定している自治体の意思決定から、疎外されるに至っているという、一般的問題の、歴史的現れにすぎない。」…ブレーメンがこういう
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