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える規模であって、ここに一つ地域評議会という政党べ一スではあるけれども住民組織が組織されている。その反面小さいが故に行政機能が足りない。地域評議会が議決をしても、地域事務所にその議決を執行する体制がなく、全てブレーメン市当局に頼まなければならない(そして、実際にはブレーメン市当局は何かと理由をつけて実行しない)。そこで人口100万ぐらいの大都市であれば区役所をある程度大きく、人口15万人に1個程度設置して、かつ住民組織をもっと小さく、1個の区役所に数個設けることをブレーメンで何人かに提案したが、それはいい考えだと言った人はなぜか1人もいなかった。ブレーメンの地域事務所の数は17であり、地域評議会の22より少なく、都心部において複数の地域評議会を地域事務所が管轄しているところがあるにも拘わらず、彼らは原則として1個の地域事務所に1個の住民参加組織が対応すべきだと考えている。ところで、ブレーメンには区役所組織をつくるべきだという考え方が、根強く存在する。その考え方の一つの根拠はブレーメン州憲法(ブレーメンは一つの州であり、ドイツの州はそれぞれの憲法を持っている)第145条第2項「自治体は、特定の地区の、とりわけ都市ブレーメンの外部区域の地域的な事柄についての行政のために、自治体法(:条例のこと=筆者注)によって地域的に選出された地域代表を設立することができる。」である。やや話がそれるが、ブレーメンは自立性即ち都市国家としての性質を守るために戦後合併を行った。ドイツの一般的な市町村合併は1970年代で、地域評議会や区代表会といった組織が組織されるのもその頃であるが、ブレーメンの場合は戦後すぐ周辺自治体を合併した経緯があり、その見返りとして地域事務所と地域評議会を設置した。そのときの政治的妥協の産物が、この州憲法第145条第2項であり、このときに想定されていたのは、今のような細かい地域区分ではなくて、区役所組織〜ブレーメン市を原則として4つか5つに区切ってつくる〜であった。これはブレーメン州の憲法裁判所の判決によっても示されている。区制度が実現されれば、総合的地域事務所は実現するが、コミュニティ・レベルの住民参加組織という点では、ベルリンやハンブルクのように不十分になろう。両者のバランスととるのはなかなか困難である。

 

 

 

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