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ビジネスの面については逆であろう。

(6)利害対立と価値ある意味世界の創出

協働は、不確定性が重奏する人間コミュニケーションを創造性に向けて活用すべくもくろまれた共同作業である。しかし、それは容易に成功するとは限らない。一般に「協働を阻害する最大の原因は利害対立である」と考えられている。利害対立が協働を「言うは易く行うは難い」ものにする。その通りだが、《意味づけ論》から見れば、利害対立は意味づけの対立である。まちづくりを例として考えてみよう。都市の空間環境は、公的および私的な物的資本と人々のさまざまな活動(ある人の活動は他の人にとっての環境の一部である)とからなる。建造物・施設・インフラがほどよく配置され、伝統的な色の屋根瓦が町並みに落ち着きをもたらし、活気と安らぎがほどよく調和するように人々の活動が響き合っている、そのような何ともいえぬ風情を醸す都市空間を想像してみよう。これは住民・企業・公共部門の相互的な「まちづくり」の協働なくして実現されない。逆に、閑静な住宅区域の真ん中に大規模なディスカウント・ストアが出現し、人や車の流れが一変してしまい、休日の憩いのためには自宅から外出しなければならない住民のことを考えてみよう。あるいは、突如、壁面をショッキング・ピンクに塗ったマンションが出現し、それを毎朝目覚めるたびに目にしなければならない向かいのマンション住民の憂鬱や不快感を考えてみよう。誰の目にも、良好な都市空間を実現する「まちづくり」にとって協働が重要なことは、明らかである。都市空間は正に《コラボ財》である。まちづくりがうまく進んでいる所もあれば、そうでない所もある。どうしてなのか。まちづくり計画の策定が利害対立を含むコミュニケーション・プロセスだからである。「まちづくり」において、仮に皆が「住みよいまち」を創ろうと話し合いに入ったとしても、たちまち主体間の利害対立が協働を阻みかねない。すなわち、ある主体にとって利益となる計画が別の主体の不利益になる。意味づけ論的に見れば、利害対立とは、計画と幸福との関係に関する意味(評価)づけの軸において、ある主体のポジティ

 

 

 

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