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を構成するさまざまなことがらの意味づけられた意味の融合体として、事態の進展とともに再編成され続けるものである。また、ここでいうコトバの意味とは、その情況編成の中でコトバが取りまとめる記憶の関連配置のことである。

(5)意味世界の創出と会話のプロセス

上述の会話プロセスは、確かにコトバの交換であり、発話行動の連鎖である。しかし、主体の内的営みに着目すれば、コトバをメディアとした意味づけの相互作用である。記憶のトリガーとなり情況編成を促すものはコトバだけとは限らない。互いの表情やビーフ・ステーキもその役をする。しかし、主たるトリガーはコトバであり、また、主たる意味づけの対象もコトバである。したがって、意味づけ論の視点を採れば、コミュニケーションは発話行動を媒介とする意味づけの相互作用プロセスである。さて、人間コミュニケーションの創造的性質の一端を、この会話例で示そう。A氏はカリブー・ステーキを食べた記憶がない。それにもかかわらず、どうして、カリブー・ステーキが如何なるものか分かり、それが美味しそうだと思ったのだろうか。A氏は確かに食べたことはない。しかし、カリブーが北極圏に生息する鹿に類似した動物であり、それがどんな姿形をし、どんな生態をしているかは、かつて見たTV番組『北の野生動物たち』で知っていた。また、ビーフやポークのステーキを食べた経験からステーキ料理なるものも知っている。また、もちろん、「カリブーのステーキは」の「の」や「は」が如何なる意味づけの働きを担っているかも体得しているし、「なかなかいけるよ」が適用される事態を思い起こすこともできる。そこで、彼は、これら体験や知識やコトバの使い方に関する記憶を動員して、辻棲の合った《記憶の関連配置》を形成し相手の発話を理解できるのである。このプロセスで、「カリブー」というコトバがカリブーに纏わる記憶を活性化させ、「ステーキ」というコトバがステーキに纏わる記憶を活性化させ、また、「カリブーのステーキ」というコトバの配列がそれらの記憶を引き込み合わせて、<カリブーの肉を材料とするステーキ料理なるもの>という関連配置に統合する。友人のコトバを聞くまでは

 

 

 

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