日本財団 図書館


雪でも行く。1晩に最高3回、平均1.5回、ヘルパー2人のチームで巡回したが、最初のうちはどういうことがあるかわからないから看護婦とヘルパーのペアで巡回していた。対象となる高齢者20名は、福岡市全域から集められたため、巡回の移動時間にかなりを費やした。巡回サービスは、移動時間の多少が非常に重要で、ケアの時間を少なくとも7割確保し、休憩時間と移動時間が3割で済むような地域の中で提供することが極めて効率が高い。大体3中学校区から5中学校区ぐらいで1つのセンターをつくり、そのエリア内で巡回すれば、7割の時間がケアに振り向けられ、3割は移動と休憩時間に振り当てられる。それで訪間先の状態はどうかと言えば、もう戦闘状態と一緒である。お母さんが要介護者で寝られていると、子供はその横に昼間の服装のまま寝る。身じろぎするとぱっと起きておむつ交換をする。そのかわりお母さんは非常にきれいに褥瘡もなく過ごされている。ある神経質な娘さんは2時間ごとに目覚まし時計をかけて起きておむつ交換をしている。ある人は包帯で手を結び合って親が動いたら自分もさっと起きあがれるようにする。いつでもそういう臨戦体制である。こうして夜寝られないために、昼も起きていられず、ごろごろしている。どちらが要介護者がわからない。そういう状態では、母に対して優しかった娘が非常に鬼のような顔になる。高齢者は、おむつをかえた時、またその刺激ですぐもらすものなのである。それは、かえてもらうと気持ちがいいからである。するとついつい自分の母親であるけれども、つねったり、たたいたり、そしてまた自分が非常に自責の念にかられる、本当に地獄みたいな状態である。そこへ巡回介護を入れると、最初のうちは心配だから夜でも起きて我々を迎えられる。だけれども3週間もすると、もう高いびきで、疲れているのであろう、我々の訪間にも気がつかないで休まれている。そのうち「あなたはこのごろ非常に顔色がよくなったね」とか、「血圧の状態がよくなったよ」と、我々から(特に50代の介護者が)言われるようになった。そして彼らは昼も意欲的になり、昼はお母さん、またお父さんを散歩に、連れて行くようになり、人間関係も改善された。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION