度をデザインするためには、公共サービスの供給についての分権的意思決定システムと、供給コストの最小化を図るインセンティブを内包した地方財政制度、提供される公共サービスの性質と費用負担の手段の整合性が必要となる。
(4)福祉サービスの拡大を説明する財政的論理
現代の福祉サービスは、所得分配の是正のためのものではなく、限りなく民間財に近い。従って、広く薄く負担するという論理が説得力を持つ。さらに民間財であっても政府が供給することが認められるケースは、非常に限定的であって、それは費用逓減の条件にある(民間では費用をペイしない)財の場合、価値財(民間財であってもその個人の選択に関する干渉を行って良い〜麻薬の使用、義務教育等〜のようなもの)の場合及び所得分配の是正が色濃く出るような財の供給を行う場合である。とすれば、マスクレイブの財政の3機能説では、福祉サービスの拡大をうまく説明できない。マスクレイブによれば、政府がやるべきことは次の3つ、すなわち、公共財を供給すること、最低生活を保障すること、経済安定をすることである。医療保障や年金はこれらには当たらない。これらは救貧策でも防貧策でもない。このような分野は本来公的機関が介入すべき分野ではないのではないか。そこで、政府が供給すべきサービスは、 1)そのサービスが外部性を持っている、あるいは 2)そのサービスの提供が市民の不確実性を取り除くことに寄与するもの、と考えればどうだろうか。政府の新たな役割は、その規模と信用を生かした効率的「社会的保険」を通じた、不確実性の回避とすると、現代の福祉サービスに正当な地位が与えられる。
(5)政府が提供するサービスと費用負担のルール
サービスが外部性を持つか、あるいは、そのサービスの提供が市民の不確実性を取り除くことに寄与するものといった性質を有する財をどのような財源で措置していくかを考えてみる。