外部性のある財については、個人に帰属感があるものとないものを分けて、帰属感があるものについては応益課税で良いのではないか、ある部分は応益課税で、残った部分を応能的課税で埋めるということでも良いのではないか、という考えが出てくる。不確実性のある財については一般的な利益であるか、最低所得保障であるか、私的利益であるかを場合分けし、特に私的利益については保険で集める、あるいは、債務保証・マネジメントコストを引き受ける、あるいは、コーディネーターを行うということでも良いのではないだろうか。またお金を借りてきて貸すことによって口を出すという、税金を使わない行政も考えられる。従って、財源の手段としては税金と交付税だけでなく、もっといろいろな手段を検討すべきであり、様々な行政(公共的要素の強いものから弱いものまで)を想定して、費用負担を考えるべきである。結局、財の範囲を広げる以上は、費用負担のルールももっと広げるべきである。そして、次には、財の性質と費用負担のルールの整合性を議論しなければならないが、それは今後の課題としたい。
(6) 効率化インセンティブのための行政制度の見直し
政府が提供すべき財の観念が広がる状況において、トータルマネジメントシステムは何かということを考えると、結局、それは社会的コストと行政コストを最小化するインセンティブのあるような仕組みを作ることである。現実に、少なくとも社会的コストと行政コストの整合性が対立してしまうと、自治体は行政コストの最小化を考えるから、社会的コストが最小にならないケースがある。予防行政に力を入れたために、入院患者が減少して、病院会計は赤字になったが、国民健康保険が他の市町村よりも少額の範囲内に収まっている沢内村はその反対のケースである。しかしながら、個々の自治体によって、特別養護老人ホームの有無、市民病院の有無、自治体の規模の大小、国保加入率の高低といった要素が異なる。さらにこれらの財の性質と費用負担のルールの整合性がないにも拘わらず、トータルマネジメントシステムを一律に定義づけるのは難しいのではないか。現状