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る市の役割が重要視されたことから、福祉の流れとコミュナリセーリングの流れが合体していった。そして逆に地方分権、つまりコミュナリセーリングが高齢社会への対応策として考えられるようになっていった。

日本の福祉ヴィジョンでも、年金・医療重点の社会保障から、介護や生活援助重視型へと転換することが提言されている。そこでは在宅福祉の充実により社会的入院患者を減らし、医療費の伸びを抑えるという方向が示されているが、これは医療費の伸びが著しく、放置すると国民経済を圧迫するため、在宅福祉を充実せざるを得なかったということでもある。地方分権によって福祉を充実させていくという視点は必ずしも明確でない。

(3) 国と基礎自治体の役割分担

スウェーデンでは、国は福祉政策の理念・ヴィジョンを決める役割を担っている。例えば老人ホームヘの補助金を廃止して、施設福祉から在宅福祉へ転換させることとか、「痴呆症」の老人介護について、グループホームケア(5〜6人)への補助金へとシフトするという方針を決定することである。また全国規模の政策、例えば年金のような現金給付や育児休暇制度の実施などを国が担当する。国における具体的な機能分担は、厚生省はナショナル・ミニマムの保障を行い、自治省は行政の効率性、クオリティ・サービスのコントロールを担当し、例えば調査・研究で北欧4国の税率と福祉サービスの比較調査(スウェーデンもデンマークと比較すると施設福祉の比率がまだまだ高い)、情報提供といったことを行う。地方(基礎自治体)は、社会福祉の供給母体として、現物給付的なものを行う。また、新しい政策の実験も行う。これは1982年の社会サービス法、1992年の工一デル改革によっても明確に位置づけられている。このようにスウェーデンでは、中央がヴィジョン・コントロールを行い、基礎自治体が具体的なサービス実施を行うという、砂時計型の構造(中間の県=広域行政の役割が比較的小さい)となっている。日本の地方分権論

 

 

 

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