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と、最適なレベルを確定することはできない。さらに難しいのがD−アウトプット(directoutput)とC−アウトプット(ConSequentoutput)の関係である。たとえば介護サービスでは、本来目指すべきアウトプット(C−アウトプット)は、老人の満足度とか、機能の回復度とか、長い目で見れば福祉水準の向上や長寿といったことであろう。しかし福祉の水準といっても、その質的側面を考慮して分析を行うことは難しい。たとえば介護サービスでは、サービスのアウトプットは、ヘルパーの派遣回数、派遣延べ時間、雇用人数といったもの(D−アウトプット)で測定される。量を量で割るような効率性の議論であれば、その定義および計測は容易であるが、効果を量で割るような有効性(effectiveness)の議論の場合には、その定義および計測方法は必ずしも明確でない。そのような中で、実際の公共部門の生産性分析で最もよく行われているのが、類似の財・サービスを生産している民間部門と比較するやり方である。この手法は比較効率性(comparative efficiency)と呼ばれている。電気、ガス、病院、ごみ収集などについて、公共部門と民間部門のコストをサービスの質をコントロールしながら比較しようとする分析で、コストをアウトプットで割った単位時間当たりの費用で評価するといった方法がとられている。また労働生産性(コスト/労働者数)とか総要素生産性{コスト/(資本と労働に各々ウェイトをおいた諸要素の指標の合計)}という評価方法もある。なお公共部門は一般に資本ストックのデータに乏しいため、総要素生産性を用いた分析が使えない場合も多い。最近は費用関数を用いた評価もよく行われている。コストが判っても単純な比較が難しい介護サービスのようなものについては、コストをみながらアウトプットをコントロールしつつ費用関数を構成し、最終的にはその関数を使って評価を行う。ここで様々な供給形態を比較してみると、おそらく公共部門の方がコストが高く、民間部門の方ががんばっている、という分析結果が大勢を占めていると思う。こうした分析方法は、これからの介護サービスやまちづくりのあり方の分析にも応用しうるのではないだろうか。

 

 

 

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