本町の地理的現況として急傾斜地や隆路の存在などがあげられる。訪問型の在宅サービスについては、保健婦、ホームヘルパー、看護婦などの移動が小型自動車、原動機付自転車を利用するため、雨天などの悪天侯時以外はこうした地理的条件がもたらす問題は少ないと考えられる。しかし、デイサービス、ショートステイといった通所型の在宅サービスについては、送迎時に高齢者、特に要介護高齢者に与える精神的・肉体的負担が問題と考えられる。
また、健常高齢者や虚弱高齢者に与える影響としては、買い物、通院などの日常生活行動への阻害、社会参加などの外出意欲の減退などを招くことが考えられる。したがって、急傾斜地に居住する高齢者に対しては、通院介助や買物などを支援するホームヘルプサービスなどの実施が必要となってくる。
集落間の移動については時間的ロスが大きくないため、在宅サービスの実施についても短時間に複数の世帯に対して効率的なサービスを実施することが可能となる。したがって、本町においては、巡回型ホームヘルプサービス、配食サービス、友愛訪問などの巡回によるサービスの実施も効率的に展開することが可能である。
(エ)保健・福祉・医療サービスの再編による多様化・高度化
要介護高齢者などに対し公的な保健・福祉サービスを提供する施設として、現在、大崎上島内には特別養護老人ホーム「大崎荘」(木江町)と老人保健施設「みゆき」(東野町)の2施設が立地している。この2施設(併設施設を含む)及び各町の社会福祉協議会が、大崎上島3町から各々委託を受け、在宅・施設サービスのほぼすべてを実施している。
このうち在宅サービスについては、本町では矢弓地区に立地する老人保健施設「みゆき」がサービスの拠点として位置づけられ、在宅介護支援センター、老人訪問看護ステーション、ホームヘルプ、ショートステイ、デイケアなどの事業を実施している。また、高齢者コミュニティーセンターが隣接して立地しておりここに事務局をおく町社会福祉協議会では、ひとり暮らし老人巡回相談事業などを実施している。なお、在宅サービスの基本的事業のひとっであるデイサービスは本町では実施されていないため、老人保健施設のデイケア、老人憩い家のミニデイサービスがその機能を代替している。
施設サービスについては、特養、老健2施設ともに大崎上島・下島などの広域を対象とした施設であり、本町からは特別養護老人ホーム「大崎荘」には8人、老人保健施設「みゆき」には約20人が入所している。ただし島内3町の住民にとってこれら2施設は、各施設が立地している“町の施設”として理解されている。このため、本町住民の多くは老人保健施設「みゆき」を利用する傾向がみられる。介護サービスニーズの増大や変化、一人暮らし高齢者の増加などにより、