(2)島の生活の豊かさの再建 人口流出を抑制し、人口減少に歯止をかけるためには、雇用開発に加えて魅力的な定住環境の実現が重要であり、特に若者の流出を抑制するには魅力的な定住環境の整備が重要な条件となる。
本町においては、住宅・住環境、医療・福祉、文化・娯楽などの充実を一層進めていく必要があるが、いわゆる都市との生活格差を解消するという尺度ではなく、島の生活様式の今日的再生が重要な目標となる。
島の生活様式と都市的生活様式は、基本的に異なり、島ならではの「ゆとりと豊かさ」の追求がテーマとなる。
島の豊かさを実現するためには、高齢者をはじめ、全ての住民が安心して居住できる基盤条件やサービスに加えて、第一に小さな地域社会の中で住民相互の「おもいやり」の心による相互扶助(ボランテイア)による地域社会の維持・形成が重要である。とりわけ、老年人口比率の高い本町において安全で快適な地域社会を維持していくためには、住民相互の「おもいやり」の心が重要である。
第二には、島の伝統文化の伝承である。島の伝統文化は、擢伝馬船などの祭りだけでなく、島の伝統料理、高齢者が培ってきた技術・技、そしてなりよりも海に関する知識であり、島で生活する知恵の伝承である。このためには、島の良さを再発見するとともに、子どもと高齢者の交流、あるいは島外住民との交流を展開する必要がある。
第三には、豊富な海の幸、山の幸に恵まれている条件を生かし、安全で鮮度の高い農・海産物の域内自給の確立である。国民の健康に関する関心が高まる中で、安全で鮮度の高い農・海産物の提供だけで島の魅力を際立たせるものであり、域内自給体制の確立に努める必要がある。
第四には、海岸や山などの自然環境の保全と魅力的な景観の創出である。現在の本町は、集落内は清潔で美しい環境を維持しているが、フェリーから眺める島の景観は、必ずしも美しいとはいいがたい。
住民が島への誇りと愛着をもつ上でも、個性的で魅力的な景観や環境形成が重要である。高齢者世帯が安心して生活できる居住環境の形成や若者が誇りと魅力をもって新しいライフスタイルが創造できる環境の整備など、島の良さを生かした生活の豊かさの再興が重要な計画テーマの1つになる。
このような島での生活条件を整えることが、本土との交流を活性化し、また、新しい価値観を有する自然との共生を希望するニューカマーを受け入れる条件となる。