日本財団 図書館


第6章九州における内航海運の活性化策等の提言

6−1九州における内航海運業の経営上の問題点と課題

(1)経営上の問題点

九州の内航海運業を巡る経営及び経営環境は、一般指標からみると、次のような状況にある。
?円高経済の定着、そしてバフル経済の崩壊とわが国経済を巡る構造変革の中で、国内輸送量は94年度には約66億トン、トンキロでは5,445億トンキロである。過去の推移をみると、輸送トン数、輸送トンキロとも91年度から減少に転じ、94年度に微増したものの、中長期的にみて減少傾向にある。
?内航海運についてみても、輸送量は91年度をピークに減少に転じ、94年度には64千万トンと91年度水準に回復したものの産業構造の変化等から中長期的にみて減少傾向にあるものとみられる。また、トンキロベースでも同様の傾向にある。
?内航海運業の経営状況は、1990年をピークに営業損益、経常利益ともに悪化している。運賃水準をみると、一般貨物船の運賃指標となっている鋼材船の運賃は91年をピークに、ケミカルや重油は時期的にずれているものの93年以降低下してきている。用船料をみても、内航船舶の主力である1,600D/W(499G/T)型貨物船の用船料は、93年水準から95年には30%近く低下しており、内航海運の経営はかなり厳しい状況にあるとみられる。

九州の内航海運の経営状況も、実態調査からみると、次のように厳しい状況にある。
?内航海運業の経営状態は、「業績が悪い」という業者は、運送業が27%、貸渡業が29%であり、「あまりよくない」を含めると、両者とも80%前後に及んでいる。
?業績が悪い理由は、運送業では「輸送量の減少」が最も多く、次いで「需要の変化」をあげており、貸渡業でも「輸送量の減少」が最も多く、次に「船腹の過剰」をあげる業者が多い。このことは今までの素材型中心であった九州の産業構造が徐々に加工型に移行しつつあり、この変化が九州の内航海運業者にもかなり深刻な影響を与えつつあるものとみられる。素材型産業の比重が高い時代には大量輸送できる船舶を中心とした輸送構造となっていたが、近年の円高に伴う内外価格差の拡大によってわが国の生産工場がアジアを中心に海外移転をしたことにより、九州の内航海運業にも徐々に影響を与えているものといえよう。
?船舶運航の採算性をみると、運送業では「比較的良い」という回答が多いが、貸渡業では「採算割れ」という回答が半数を超えている。運送業者は荷主と運賃について直接契約できるうえに採算性の良い輸送には自社船を投入することが可能である。一方、採算性の悪い輸送は他の運送業者に回したり、用船料を下げるなど一定の利益を確保することも可能である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION