ここでは、モデル港湾として取り上げた関門港を中心として、九州・山口の港湾における物流機能の充実を進めていくにあたっての課題を整理する。
(1)港湾物流機能充実に向けた実施体制の整備
本調査においては、港湾物流機能充実のための具体的方策を提案したが、これを実現させるためには、その実施主体となる港湾管理者や民間事業者などが協力して取り組んでいく体制を整備することが必要である。関門港においては、北九州市、下関市が中心となって関門港全体としての組織づくりを行い、各方策については、その下部組織を通じて実現を図っていく形式が想定される。
(2)EDI化推進の具体的な進め方の検討
港湾物流機能充実に向けた各方策のうち、EDI化を中心とする物流情報化への取り組みは各方面で行われており、それが結果として多数の情報システムの乱立となり、換えって非効率を招くことを回避するため、その具体的な進め方についての検討を行い、当事者間での調整を十分に図る必要がある。
(3)九州・山口の港湾間・夕一ミナル間における役割分担の調整
九州・山口地域の港湾において、過剰投資や過当競争が発生しないよう、国の港湾政策との整合性を図りながら、関門港と博多港やその他の港湾との役割分担を調整していく必要がある。特にトランシップ機能の充実については、わが国全体における港湾配置構想との整合性に十分留意する必要がある。
関門港においては、関門港の中に既存ターミナルや今後新設されるターミナルが複数存在するため、それそれがその整備段階に応じでどのような役割を分担していくべきかについて、関門港全体の効率性向上の視点に立った検討を行い、実施に移していくことが必要である。
(4)九州・山口の港湾をめぐる環境変化への対応
これまで中国・台湾間では直行航路の開設が禁止されていたが、本年(1997)7月には香港が中国に返還されるため、これまでの香港・台湾間の航路がどのように取り扱われるのかが注目される。また、これに先だち、1月には中国・台湾の直行航路の開設に向けた民間べ一スでの協議が基本合意をみた。中国・台湾の直行航路が開設された場合には、わが国や韓国など周辺諸国を含む極東アジアの航路体系が大きく変化する可能性がある。
九州・山口の港湾における港湾物流機能の充実にあたっては、このような港湾をめぐる今後の環境の変化を見極めながら、柔軟に対応していくことが求められる。