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?T わが国農林業の担い手の現状と国の施策の動向

1 農業における担い手の現状を見てみよう。

(1)減少テンポが異なる農家、農業労働力。

(「平成7年度版農業白書」)

 

(減少テンポが異なる農家、農業労働力)

戦後の復員者の開拓等に伴い増加した農家戸数は、高度経済成長が本格的に始まった昭和30年代中頃を境に、その後一貫して減少を続けている。そこで、35年から平成7年までの35年間の農家、農業労働力の動向をみることとする(図?X−1の左図)。

まず、農家戸数は、7年に344万戸と35年の606万戸に比べ43%減少した。なお、7年の戸数には、雲仙・普賢岳の噴火と阪神・淡路大震災の被災地域の約7千戸を含んでいないこともあるが、最近5年間の減少率は年率2.2%とこれまでになく高かった。一方、「人」にかかわる諸指標は、農家戸数に比べ、いずれもより大きな減少率となっている。このうち、農家人口は、35年には3,441万人と、国民の3人に1人は農家世帯員であったのが、7年では8人に1人の1,506万人(35年と比べ56%減)となっている。また、農業労働力の諸指標については、30年代において過剰就業状態にあったことに加え、高度経済成長に伴い産業構造が変化するなかで、非農業部門への流出が続いたことから、大幅な減少がみられる。35年に比べ農業就業人口(農業に主として従事した者)については66%減の489万人、農業就業者のなかでも従事日数が特に多い農業専従者(年間150日以上農業に従事した者)については、78%減の205万人となっている。ちなみに、総務庁「労働力調査」でみると、農業就業人口は、35年時点で総就業人口の27%を占めていたが、50年には11%、6年では5%と、そのシェアが著しく低下している。しかし、農業就業人口の占める割合の低下は、経済成長の過程ですべての国でみられる現象であり、アメリカ、イギリスの1994年現在の同割合は約2%(林業、狩猟業、水産業を含む。)と、我が国よりさらに産業構造の変化が進展している(表?X−1)。

農家戸数に比べ、農家人口、農業労働力の減少率が大きかった背景としては、第1に、農家1戸当たりの世帯員数が、35年の5.68人から7年には4.38人へと1人以上も減少したことがあげられる。年齢別にみると、16歳以上の世帯員数が、35年以降3.7人程度でほとんど変化していないなかで、世帯員数全体の減少は、専ら16歳未満の若年層において発生している(図?X−1の右図)。第2に、農家の世帯員数のうち、農業従事者(1年間に1日でも農業に従事した者)が、この35年間、3人弱で微減にとどまっているなかで、恒常的勤務を主とする安定兼業の増加に伴い、農業就業人口が減少したことがあげられる。

 

 

 

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