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はじめに

わが国の農業は、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づく農産物の自由化実施により国際競争時代に突入した。また、わが国の林業は、新設住宅着工戸数の減少に伴う木材需要の減少や木材価格の低迷等により採算性が悪化している。さらに、農山村地域においては、地域の担い手となる若者の流出による後継者の減少や従事者の高齢化の進行にみられるように、農林業は魅力を失いつつあり、地域を取り巻く環境は厳しいものがある。
一方、都会に住む農林業を一度も経験したことのないサラリーマン等の中には、農林業に魅力を感じ、都会から農山村へ移り住み農地等を取得して新たに農林業を始める人が増えている。
こうした中で、国においては、就農支援資金制度等就農をサポートするための各種施策や、林業労働力確保支援センターの設立等林業労働力を確保するための各種施策を実施している。また、地方公共団体においては、サラリーマン等が新しく農林業を始めることを前向きにとらえ、魅力ある就農環境をつくり農山村地域の活性化を図るために、様々な取組みが行われている。
そこで、それぞれの地域に即した独自の取組みを行っている地方公共団体の事例を通じて、魅力ある農林業の担い手づくりについて検討する。
1 岡山県
「晴れの国おかやまで農業経営にチャレンジしませんか!」というキャッチフレーズの「ニューファーマーズ確保対策事業」を平成5年度から実施している。
地域農林漁業の発展のためには新規就農者等の確保が大事であるとの認識のもとに、他産業従事者に対して農業への求人活動を積極的に展開し、就農希望者に対して就農に向けての技術の習得や地域社会にとけ込むことを推進して新規就農者を確保・育成している。また、新規就農者の地域定着が地元青年農業者に良い刺激を与えることにより、農村地域の活性化に取り組んでいる。
2 岩手県東和町
平成4年に第3セクター「(株)とうわアグリトピア公社」を設立し、バラの大規模栽培や滞在型農園施設(農園付住宅)を設置するたど、都市在住者に農業と農村の良さを理解してもらい、農村地域の活性化に取り組んでいる。
さらに、第3セクター「(株)とうわ大増」による東京銀座での産直、神奈川県川崎市の中学生等の町内農家へのホームステイ,町民手作りテレビドラマ「牛とコスモス」の制作・放映などにより消費者ニ一ズに直結した流通の確保及び開かれた地域社会づくりを行っている。
3 島根県横田町農業の低コスト化、合理化によるゆとりの創出から生産性の高い農業づくりを支援するため、平成元年度に第3セクター「社団法人横田町農業公社」を設立した。
横田町の委託を受けて公社では平成6年度から「農業者インターン制度」を実施し、公社の開発営農実証農場等での研修を通じて農業インターン者を育成しており、農業インターン者等で構成される農業生産法人による新しい農業振興に取り組んでいる。
4 熊本県小国町昭和60年に「悠木の里づくり」をスタートさせ、古いものだけを大切にするという従来の伝統的な山村の発想の枠を越え、現代の知恵や感覚をプラスして新しいものを創り出すことにより、山村の活性化に取り組んでいる。
また、林業就労者の高齢化と減少に対応するため昭和61年に第3セクター「悠木産業(株)」を設立し、通年就労体制の整備,身分の安定保証,福利厚生の整備された第3セクター方式による労働力を提供し、地域林業の発展に尽くしている。

 

 

 

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