(D)船腹拡充計画
ポーランドの海運界も世界の海運不況の例外ではなく、経営面で非常に困難な状況に直面している。
80年代の初期には、ポーランド海運は国家経済のなかで最も活発な部門のひとつであった。また、海運部門の従業者総数は、15万人(82年)を超え、海運界における被雇用者総数の全産業中に占める割合は1.3%、国内総生産(GDP)への寄与率は2.8%に達していた。また、輸出総額の10.2%を海運業で占めていた。
その後、長期にわたる世界的な景気後退と海運不況により、ポーランドの海運業も苦境に追い込まれている。
ポーランドの商船隊は、耐用年数20年を過ぎた老朽船が多く、その一部は近代化されてきたが、それは主として北米やオーストラリア向け航路の就航船を対象としたものであった。
そのため、大部分の船舶は老令化し、競争力が弱く、ポーランド貿易、特に輸出における自国商船輸送の大きな役割のためにも、船隊の近代化による競争力の強化が必要とされている。
ポーランドの海運政策は、輸出入貨物の90%までを自国の船舶で輸送することを目標とし、これにより外貨を節減し、商船隊の近代化や新規建造の発注ができるとしている。
また、新造船の建造のみでなく、一定の要件を満たす中古船の取得、既存船の近代化、非能率な老朽船の解撤などに対しても助成策を請じて、国内船主に船隊の増強・拡充の意欲を高めるよう努力している。
政府は、さきに海運界の合理化、再竈成を行い、自国海運業の発展という観点から、必要に応じて代替建造を奨励しているが、組織的な長期に亘る船腹拡充計画は策定するまでに至っていない。