他の欧米諸国と同様、エクアドルの製造業は輸入代替策に沿って発展してきたが、これは労働集約産業よりも、外国からの中間財、資本財に大きく依存する産業に傾斜しており、対外債務を増加させる要因ともなった。
一方、国内市場が狭いため生産は伸びず、輸出産業も生まれてこなかったので、対外債務はますます悪化し、それに伴う政府の緊縮政策は、国内製造業の低迷に拍車をかけることとなった。
石油製品を除く、製造業生産の内訳をみると、消費財の生産が約70%を占めている。特に食品加工(砂糖・小麦精製、醸造、ココア加工、水産・肉加工など)が約40%、繊維・衣類が約24%に達しており、このほか、皮革、医薬品、雑貨を含めて、製造業生産の70%に達する。
また、輸出製品も石油製品以外は殆ど全てが食料品で、その他の工業製品は輸出総額の3〜4%程度を占めているに過ぎない。
かつて、エクアドルは機械、金属製品などをアンデス共同市場諸国へ輸出していたが、各国が輸入制限を実施したため、近年は殆ど実績がない。
エクアドルの製造業が停滞している要因は、インフラストラクチャーの未整備、熟練・技術労働者の不足、狭隆な国内市場などである。
海外での高収益を選好して、資金が恒常的に流出する傾向にあり、政府は金融の自由化を通じて資金の国内への還流に努力している。
エクアドル政府の工業振興策は、石油以外では余り干渉的ではない。むしろ、国が従来経営してきた部門の民営化を推進している。
その基本は、非伝統的産業の保護・育成にあるが、従来この種の産業に与えられてきた税制優遇措置も、その適用範囲が狭められる傾向にあり、最近の輸入制限および禁止措置などの輸入抑制措置の撤廃とも相まって、国内製造業は試練に立たされている。